協賛した2チームがそれぞれ好成績を上げられたことで、微力ながらかかわった人間としてもほっとしたと同時に、実際にレースという厳しい環境で、樹脂3Dプリンティングによる部品が実用出来ることがわかり、こちらとしても大変勉強になりました。
一方、他にも3Dプリンティングによる同じような部品を使われたチームがありましたが、テスト中に破損してしまい、接着剤で補修された例も見られました。
これらの結果から、レーシングカー部品に限らず、実使用部品、実使用治工具を3Dプリンティングで直接生産するDDM(Direct Digital Manufacturing)を成功させるためのカギを学ぶことができます。
①企画構想の段階から、3Dプリンティングについて知り、DDMのメリットが出やすい部品を選ぶ
今回協賛した2チームとも、基本的な車両のレイアウト、部品構成の段階から3Dプリンティングについて当社で学んでいただき、一緒にどの部品をDDMかするかについて検討しました。「3Dプリンティングだから何でもできる」というのは誤解で、大きさ、材料が適し、設計の自由度を活かすことで性能向上に大きく貢献する部品を選ぶことで、DDMの利点を最大化することができます。
②解析を活用しながら、3Dプリンティングの利点を生かし、欠点を補う設計を行う
3Dプリンティングで吸気系の部品を作る大きなメリットの一つは、空気の流れ、圧力に適した形状にできることですので、まず流体解析によりおおまかな内部形状を設計し、出来るだけそれに近い形状で設計を行うと効果が大きいです。
またサージタンクは、樹脂で作るとどうしても材料強度により空気圧による変形が懸念されますが、適切な補強外リブを追加すれば必要な剛性が得られます。形状が複雑ですと最適なリブの位置は容易に決められませんので、まずコンピュータによる強度解析から変形が大きくなる箇所を把握し、そこにリブを追加することで、樹脂の強度不足を補うことができます。
このように、従来金属で作られてきた部品も、適切な材料と適切な設計により樹脂3Dプリンティングで製造できることがあります。もちろん軽量化だけではなく、従来出来なかった形状による性能向上も大きな利点となります。
また来年に向け、どのような新しいDDM実用パーツがうまれ、成果につながるのか、筆者も今から楽しみにしています。