製造ソリューション事業本部

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アメリカ AMUGに来ています!掲載日:2019/04/04

昨年もご紹介しましたが、アメリカで3Dプリンティングユーザー自身が、ユーザーのために情報交換の場として31年間毎年開催されている、AMUGカンファレンスが今年も開催され、筆者も参加しています。今回初めて開催中に現地から速報をお届けします。

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

今年もAMUGに参加しています!

このコラムでも過去に紹介していますが、AMUGとはアメリカの非営利団体Additive Manufacturing Users Group, Inc.が年1回開催している、講演会と展示会両方を含むイベントです。過去にこのコラムでも昨年一昨年の様子を紹介していますが、筆者は2012年から毎回出張参加し、今年も参加していて、今回は始めて会場から速報としてお届けします。

AMUGカンファレンスのホームページ

http://www.amug.com/

目的は「全てのAdditive Manufacturing(3Dプリンティングと同意)装置所有者と利用者に対し、業界をけん引する方々による最新のアイデアと投資対効果の高いソリューションを提供すること。」とあり、「ユーザーによるユーザーのためのイベント」というところが、他のイベントと違うところです。

今年は一昨年と同じアメリカ イリノイ州シカゴのHilton Chicagoホテルで開催されています。緯度が東京より高いので外は寒いですが、現地の人はそれでも暖かいほうだと言っていました。

まず昨年の参加者が約1700人に対し、今年は2100人を超えているとのことで、北米の3Dプリンティング産業の成長拡大が堅調なことが伺えます。今回も日本から、または日本企業のアメリカ拠点から複数の方が初めて参加されていますが、残念ながら多くはなく、正直さみしい状況です。

AMUGは3Dプリンターや関連商品を売る会社による展示会と、講演者によるセミナーの2つで構成されています。初日、2日目に開かれる展示会は、下の写真のような感じです。

アメリカらしいと思いましたが、NASCARというレースの車両がポンと置いてあり、中を見るとステアリングブラケットなど、いくつかの部品がトポロジー形状最適化と金属3Dプリンターで作られていて、メーカーの方の講演もありましたが、作ることにも求められるスピードが3Dプリンティングにより圧倒的に早くなったとのことでした。

その他、一般公募による技術コンテストがあり、例えば仕上げ部門で1位を獲得されたのは、下のチェロでした。木製の楽器からすべての部品を3Dスキャニングにより3次元データを作り、Stratasys FDM ULTEM9085で造形、コーティング、塗装、接着組み立てで実際に弾ける楽器を作られたそうです。こういったことを時間と労力をかけて取り組まれた熱意も感じることができました。

下はコンセプト部門で1位を獲得した、アメリカンフットボールのクッションを、人の頭の3Dスキャンデータから、専用開発ソフトウエアによる複雑な編み目構造を自動設計、ウレタン材料による3Dプリントによりオーダーメイドで作る仕組みを開発された実物も展示されていました。最近スポーツ用品このようなマスカスタマイゼーションを実現した商品が次々市販されるようになり、今後も増えていくことが予想されます。

 

実際に見て、触れた活用事例は?

AMUGに毎年続けて参加しているのは、ネットではわからない、日本の皆さんにもとても参考になる活用事例を知ることができるだけでなく、実際に見て、触って、また作った方から直接話を聞けることが一番の理由で、次に既にご存知の方、また初めて出会う方々と直接話し、人のネットワークを作ることができることも大きな理由です。

セミナーはこのような広いホールや、多数の小さいホールで数多く用意された中から選んで聞くことができます。

今回もここでは書ききれない多くの事例を学んでいますが、その中から印象的だった事例をいくつか紹介します。

昨年12月に こちらのコラムでご紹介しましたが、今回特に自動車メーカーのFORDの方々が積極的に発表され、特に樹脂3Dプリンターによる量産工場での治工具の事例は、動画で見たものを直接見て触れることもでき、また詳しい情報も得られたのはとてもよかったです。

下の写真は、トランスミッションの重たい部品を作業者が箱に並べる作業を楽にするリフターと呼ばれる治具を、従来の金属製から樹脂に置き換えた事例です。

Stratasys Fortusと炭素繊維強化樹脂Nylon12CFにより、重量も、コストも、作業性も大幅に改善したとのことでした。左が従来品、右が3Dプリント治具です。実はここに至るまで3回試作、改善を繰り返したそうですが、それも3Dプリンティングであれば比較的早く容易にできたことも利点かと思います。

また、トランクなどにラベルを貼る位置決め治具を、車体とラベルの3次元データから半自動で設計し3Dプリントする仕組みを開発された例が紹介されました。

こういったことは、ひとつひとつは小さい改善ですが、全体として大きな効果につながると考えられ、欧米ではますます拡大することは容易に予想できます。日本でも、このような事例を参考に日本の事情に合わせて取り込んでいくことは、国際競争の中で必要だと考えています。

もう一つすごいと思った事例は、アメリカのアニメーション制作会社LAIKAがStratasys J750で作ったクレイアニメーションモデルで、少しづつ形を変えながら撮影する、いわゆるパラパラマンガのようにアニメーションを作るためのモデルですが、これまでも3Dプリンターで作られていましたが、手で塗装仕上げしていたものを、特に顔の部分の数千の異なる表情をソフトウエアでデザインし、フルカラー3Dプリントで作リ、それを付け替えながら撮影することにより、工数、期間削減だけでなく、リアリティーの高い作品を作ることができたそうです。

こちらもプリンターが表現できる色が増えたことや、表面の滑らかさが良くなり、サンドペーパー仕上げせずに透明塗装するだけでそのまま撮影に使えるようになったとのことですが、それを活かせるソフトウエアが出来、データを作れる人がいることが大きい進歩で、やはり若いころからの3Dプリンターの教育が重要だとおっしゃっていました。

来年は是非皆さんの参加をお待ちしています!

このコラムは現地時間4月4日の朝に書いていて、AMUGもこれから最終日の講演が始まる予定です。時差ぼけを治すのが不得意なので、相変わらず苦戦していますが、何とか頑張って情報収集したいと思います。

毎回長いようで、終わるとあっという間に感じますが、もちろん学べることだけではなく、参加されている方々が皆さんがとても明るく、3Dプリンティング活用の熱意にあふれ、またとてもフレンドリーに接してくださることでこちらも元気をもらって帰れるので、まだ終わってないうちから来年も来れるといいと思っています。

昨日発表があり、来年は2020年3月22日(日)から26日(木)まで、今年と同じシカゴHilton Chicagoで開催されるそうです。今年よりも多い2400名の参加が見込まれるそうです。まだ先で、また会計年度末でお忙しいとは思いますが、是非日本から、またはアメリカの拠点から参加されることをお勧めします!

帰国するころは暖かくなっているといいのですが.. 次回はAMUG報告の第2弾をお届けしたいと思います。

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