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3Dプリンティングの次のレベルへアメリカが進む?掲載日:2022/05/09

5月大型連休も終わりましたが、その間の5月4日にアメリカ バイデン大統領が会見の中で新しいイニシアチブ「Additive Manufacturing Forward(AM Forward)」を発表したとのニュースがありました。これはどのようなことで、何を意味するかというと...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

アメリカ「Additive Manufacturing Forward」イニシアチブの発表

5月の大型連休が終わりました。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の行動制限が大きく緩和されたとはいえ、以前のような過ごし方が出来なかった方も多いと思います。また国内外の社会や経済のニュースから、本当に明るい気持ちで過ごせなかった方も少なくなかったと思います。

別の話題ですが、筆者がスーパーで買い物をした時、玉ねぎの値段が高かったり、売り切れていることが増えたので店員さんに理由を聞くと、昨年夏の北海道の干ばつで出荷が大幅に減ったからとのことで、さらに調べると産地の佐賀での冬の異常気象、世界的な生産と物流の停滞で輸入量も減っていることが重なっているようです。この少し前のコラムでもバタフライエフェクトのことを書きましたが、グローバル化した現代ではなおさらバラバラに起きたことが複雑に絡んで、良くも悪くも変化が起きることを実感しました。今回もそのような話題です。

アメリカCNNのネットニュースで知りましたが、連休中の5月4日にアメリカ バイデン大統領が演説の中で新しいイニシアチブ「Additive Manufacturing Forward(AM Forward)」の立ち上げを発表したとのことでした。詳しくはキーワードで検索していただくと出てくる複数のニュースをご覧いただきたいのですが、これは中国に対抗する経済政策についてが主の会見の中で発表されたので、普通の政治経済ニュースとして配信されました。

筆者の理解で要約すると、アメリカ連邦政府が、アメリカの製造大企業数社がアメリカ国内の中小製造業者から3Dプリンティング部品を積極的に購入することを支援するもので、NPO法人のApplied Science & Technology Research Organization (ASTRO)が全体をサポートするとのことです。2013年に当時のオバマ大統領の一般教書演説の後、現America Makesという産学官共同の3Dプリンティング実用化研究組織(基本的には軍需用途が主)が作られたりして、その時と近く、つながっている動きではありますが、明らかにアメリカが3Dプリンティングの価値を評価し、国内製造産業全体(軍需や航空宇宙だけでなく)成長のカギになると考え、次の実用レベルに進もうとしていると見られます。

一方、個人的に背景を読んでみると、アメリカの経済はIT巨大企業やスマホ、EVなどの新興企業が世界全体で利益を上げて潤ってきたものの、主要部品が海外製であったり、海外で批判や逆風も起き、加えて国際情勢が急変したことで、軍需だけでなく製造全体で海外依存のリスクが現実となり、国内だけで作る、そのための人材を国内で確保する必要が待ったなしになったことに加え、それを短期に解決できそうで、アメリカがリードを保てている製造技術がAM(3Dプリンティング)以外に見当たらない(NC加工機のアメリカでの経緯は前のコラムで書きました)、更に不満が高まる製造産業従事者への選挙対策ともとれますが、真相はもっと複雑な背景が絡み合っているのでしょう。

これが今後どうなるかはわかりませんが、欧州、日本を含めたアジアの3Dプリンティングにも何らかの変化をもたらすと思いますので、注視しておくべきだと思います。

アメリカの自動車産業も次のレベルへ

前々回のコラムでも触れましたが、4月2日からアメリカ シカゴで開催されたAMUGカンファレンスの今年の基調講演者は、Divergent 3D社とFord社の自動車産業の2名で、アメリカ国内から参加された方に教えて頂いたのですが、Divergent 3D社とCzinger社の創業者Kevin Czinger氏は最初の製造市販車「21C」についてと、2023年に納車を始める計画を話されたそうです。

21Cについては下のYouTube動画をご覧いただくのが早いのですが、エンジンと電気モーターのハイブリッドで、縦に2名乗れ、1250馬力、車重1200kg、定価約2百万US$、80台限定製造販売という桁違いのハイパーカーで、車体やサスペンションに多くの金属3Dプリント部品が使われています。4月に日本にも代理店が出来、買えるそうです。既にアメリカの2つのレースサーキットコースの市販車最高ラップタイムを更新した動画も公開されているので、走る、曲がる、止まるも高いレベルに出来ているようです。

実は筆者は2018年にドイツでの展示会formnextで下の写真の通り試作車のフレームを実際に見て驚いたと同時に、「これが本当に市販されるのか?何年先か?」と正直思っていました。

もちろん、これまでの3Dプリンティング製の自動車部品と同じく、高額少量生産の特殊なクルマの例ではありますが、Czinger氏への海外メディアのインタビューによると、目指しているのは高額な初期投資となる型や専用の設備を使わず自動車及び他社へ供給する部品を製造することであり、それを Divergent Adaptive Production System (DAPS) として開発したこと、また各要素部品はAIを活用して設計されており、それを実現するのに現状使えて、合っているのがAM(付加製造)なだけで、AMの活用が目的でもなく、固執もしていないとのことで、この考え方が大事なポイントです。1小企業の特殊なクルマであっても、このような自動車開発製造がアメリカで現実になることは、次のレベルに進む大きな一歩であり、前述のイニシアチブにもつながる変化になると思います。

日本ではこのようなニュースが少ないのが残念ですが、筆者が最近嬉しく思った記事をご紹介します。

2018年に筆者が出会い、取材して出来た3Dプリンター活用事例にご協力いただいた、片耳難聴の人のためのメガネ型補聴器研究開発チーム「asears(アズイヤーズ)」の高木様は、その後も東大大学院工学系研究科で研究を続けられ、2024年までの実用化を目指し起業へ歩みを進められていることを知りました。

高木健さんの聴覚を支援する眼鏡型デバイス「asEars」が日経産業新聞に掲載!

丸紅情報システムズ株式会社ウエブサイト内事例記事はこちらをご覧ください。このような小さな変化が大きな変化につながればと思います。

「関西 メタル ジャパン(高機能 金属展)」へ出展します

直前のお知らせで申し訳ありません。弊社丸紅情報システムズは下記の展示会に出展し、Desktop Metal社の金属3Dプリンターシステムの最新情報をお伝えする予定です。

第9回 関西 メタル ジャパン(高機能 金属展)

開催日時:
2022年5月11日(水) ~5月13日(金)
10:00 ~ 17:00

会場と弊社ブース:
インテックス大阪 小間番号:24-13

詳しくはこちらをご覧ください。

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