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3Dプリンティングの「まず作ってみる」効果は?掲載日:2023/06/28

6月21~23日に東京で「次世代3Dプリンタ展」が開催され、とても多くの方が来場され、盛況でした。その中で3Dプリンティングを導入し、効果を出されたユーザーのお話を伺う機会があり、そこで「まず作ってみる」効果が話題に出てきました。それはどのようなことかというと…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

「次世代3Dプリンタ展」に出展しました

全国的に梅雨入りし、東京も曇りや雨の日が続いていますが、沖縄では梅雨明けしたとのことで、こちらがようやく季節に慣れてきたかな?と思う頃にもう次の季節がやってくるようで、なんだか季節に追い立てられるような感じで、2023年ももう半分が過ぎようとしています。一方で、コロナ禍も円安も、少し収まったかと思ったらまた新たな波が来ている様で、繰り返しでなかなか先に進まないこともありますが、これも天気同様、少しずつ波を繰り返しながら、良い方に進んでいくと思いたい最近です。

さて、先回のコラムでもお伝えしました通り、先週6月21~23日に東京で「次世代3Dプリンタ展」が開催され、筆者も3日間丸紅情報システムズのブースにて参加してきました。ほぼ感染対策の制限がない久しぶりの展示会だったこともあり、3日間ともとても多くの方が来場され、大変盛況でした。特にアジア各国からの来場者も多く来られていたことから、ポストコロナに向け国内外問わず情報収集を積極的に行われていることが伺えました。

丸紅情報システムズ株式会社では金属バインダージェッティング方式3DプリンターシステムDesktop Metal Shopシステムのプリンター実機展示の横で、最新型ハンディスキャナT-Scan hawk2(Zeiss社)を展示した他、
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Desktop Metal Studioシステムの造形実動展示、
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樹脂ではStratasys社製品として、国内でも導入が増えている量産対応DLP方式3DプリンターStratasys OriginOneの実機とサンプル、植物原料ナイロン11で実部品量産が出来る新製品H350のサンプル、
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新発売された樹脂FFF方式3Dプリンターで、最大330x240x300mmのワークサイズ、290種類を超える豊富なフィラメントが使えることなどを特長とするUltiMaker S7と、水溶性PVAサポートを従来より4倍の速さで溶解するUltiMaker PVA Removal Stationの実動展示を行いました。
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既に3Dプリンターを使われている方々も多く来場され、お話を伺うと「まず3Dプリンターでの試作による効果は得られたので、次のステップへ活用を広げるための情報を集めている」という声が数年前に比べると明らかに増えたようでした。一方、「どのようなことに活用を広げればよいかわからない」という声も多かったのも事実です。これに対する答えは百者百様で、「これ」という正解はありませんが、実際に活用を広げて成功されている先行者に共通している「傾向」もあるようです。

3Dプリンティングの「まず作ってみる」効果

上記の展示会の中で開催されたセミナーの中で、大企業と言える2社の方々が、3Dプリンティングとの出会いから、社内に導入するまでのご苦労、それを乗り越えた方法、今に至るまで得られた成果の実例を、かなりオープンにお話をされ、筆者も伺う機会がありました。詳しくはここではお伝え出来ませんが、2社とも全く異なる製品やビジネスをされているのに、「共通すること」が多かったのは興味深いことで、筆者の経験上も、これらは規模の大小にあまり関係なく、企業組織であれば共通することが多いと感じました。その要点は以下の通りです。

・まずある個人が、何かのきっかけで3Dプリンティングを使っている他社、または自社他部署の現場と成果を見て「衝撃」を受けることがきっかけになり、まずひとりで社内の今の仕事の課題解決に使おうと動き始める。

・上長や同僚に3Dプリンティングの効果や可能性を訴えても、まず理解されない。ただ「あるモノを作りたい」ではなく、組織として3Dプリンターで何をしたいのかを丁寧に説明する。

・限られた少ない用途では導入を認めてもらうには少ないので、社内でどのような需要があるか調べて集めてみる。

・それらの需要と個人の熱意でまずは安価な3Dプリンター購入を提案、説得、購入し、強度や精度ではなく、現状の製造プロセス改善の「速さ」を実感してもらうような成果を早く出し、繰り返し上長や同僚に報告する。

・ある程度の期間使い、成果が認められた後に、低価格プリンターでは出来ない用途に使う目的で高性能な3Dプリンター導入を提案、成果を共有するサイクルを繰り返す。

その他、実際に社内製造ロボットや治工具に活用された成果事例をご紹介いただいた中で、強調されていたのは、3Dプリンティングの「スピード」は実際やってみないとわからないこと、また設計者や生産技術者は何か作るときに、いろいろ頭で考えてから試作で評価することが良くあるが、3Dプリンティングは「まずやってみる」「まず作ってみる」ことを可能にするものであり、「モノ」以上にその考え方やプロセスが変わり、定着することが大きな成果につながると仰っていました。同時になんでも3Dプリンターで作るのではなく、例えば摺動部品やはめあい部品はアルミ切削を使っているとのことでした。

一方、3Dプリンティングを使うために、3D CADを使えるようになること、使える人を育てることは必ず必要だが、高いスキルは不要であり、お話しされた方々も3Dプリンティングによる「効果」のためにCADを勉強し、使えるようになったとのことでした。

最後のまとめで、3Dプリンティングを導入し、活用には、社内外に「3Dプリンティング仲間」を作ることは基本です、と仰っていました。これはその通りだと思いますが、筆者は逆もあると思っています。つまり、これまで難しかった、社内の他部署(設計製造だけでなく、経営、財務、物流、海外拠点なども含め)の関係者、もしくは社外(お客様やサプライヤ含む)の関係者と仲間を作るきっかけになるのが3Dプリンティングの大きな「効果」でもあると考えています。また皆さんの中にも思い当たるフシがある方もいらっしゃるかと思いますが、どうしても3Dプリンティングの効果として「革新的設計形状」や「既存製造のカイゼン」に期待や注目をされがちですが、「まず作ってみて、作りながら考える」を実現する3Dプリンターの効果は意外と大きいのではないでしょうか。

展示会に調査、出展で参加された方も多いと思いますが、上記も含め、ぜひ得られた情報、人脈をポストコロナの事業成長にぜひ活かしていただければと思います。

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