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展示会に見た3Dプリンティングの転換点とは?掲載日:2024/02/07

先週「TCTJapan 2024」展示会に出展参加してきました。その中で展示だけではなく、国内外の講演においても3Dプリンティングに様々な「転換点」が来ていることが見えてきました。それはどのようなことかというと…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

TCT Japan 2024に出展しました

全国的に比較的暖かかったらしい1月から2月になった途端に関東甲信、東京都心でも雪が降りましたが、その前週に前回お知らせした展示会「TCT Japan 2024」が開催され、弊社もブース出展しました。雪が降る前の開催でよかったと関係した方は皆さんほっとされていると思います。主催者からの来場数の発表はまだ届いていませんが、個人的な感触では2日目、3日目とだんだん来場者が増え、講演会場も満席の回が多く、また以外にも近県以外、海外から来場された方も多かった印象でした。

弊社丸紅情報システムズのブースでは、Stratasysの新材料「Nylon-CF10」と同材料での造形に対応したFDM®方式3Dプリンター「F190CR」、オフィス環境で使えるフルカラー3Dプリンター「J55 Prime」などを実機実働展示したほか、前回もお知らせした、最大2倍のスループットを実現するFDM方式最新機種「Stratasys F3300™」の原寸大写真を展示し、ご紹介しました。
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また、お客様でもあるブラザー工業株式会社様が、社内の3Dプリンティング活用の課題であった、表面粗さと寸法を射出成形品に近づける仕上げ切削加工を早く簡単にするために開発されているソフトウエア「THREEDIO」とそのサンプルも展示しました。これにより、切削加工で必要な位置決めや保持のための枠構造を簡単に設計でき、切削加工初心者でも使いやすい、3Dプリンターの活用範囲を広げるツールです。
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この3日間で、昨年までと違う3Dプリンティングの「転換点」がいくつか見られたと思っています。まず展示会全体として、以前はブース前でノベルティを配ったり、ブースステージで目を引くプレゼンテーションを繰り返したり、また来場者も「どんな新しいものが見られるか」という期待感と、とにかく実際に見て情報を集めたいという方で混みあうことで喧噪感もありましたが、今回はそのようなことがあまり見られず、来場の方も「既に3Dプリンティングを使っていて、次の課題がある」とか、「これから使いたいが、このような用途で使いたい」というような来場目的を持たれていた方が増え、加えてブースでも落ち着いた雰囲気で実質的な情報交換をされる光景が多かったように見えました。これは欧米でも見られる傾向ですが、3Dプリンティングの活用が、より広く深く、実質的になってきたことを反映しているとすれば良い転換点で、今後も続くと思います。

展示内容についても、過去には海外大手3Dプリンターメーカーが大きなブースで多数の装置とサンプルを展示する傾向にありましたが、今回はそれらがほぼ無く、販売会社による中小規模ブースが多かったこという変化が見られ、また展示物も樹脂、金属共これまでより更に大きいサンプルが注目を集める一方、逆にこれまでで難しかった小さく細かい形状サンプルもあり、大小両極の広がりがあったことも今回の転換点で、これも今後続く傾向だと思います。

国内外講演から見えた転換点

今回は展示から以上に講演から、3Dプリンティングの産業、期待と課題、使う側の大きな転換点が見えたように思います。ここでは聴いた講演の中から注目した要点だけを以下にお伝えします。

講演者:
Wohlers Associates, powered by ASTM International
Head of Advisory Services and Market Intelligence
Mr. Terry Wohlers

ご存じの方も多いと思いますが、講演者は35年間毎年3Dプリンティング市場に関するレポート「Wohlers Report」を発刊され、世界の3Dプリンティングを長く広くご覧になってきた方です。近年見られる変化として、3Dプリンティング取引額ベースで自動車産業関連が約16%と、航空宇宙産業の約14%を上回っているとみられるそうです。これは自動車が大きく変わる中で、試作でも治工具・実部品製造でも3Dプリンティングの活用が増えたことが背景ではと推察します。もうひとつは樹脂材料の取引額が従来トップで、まだ伸びている光硬化樹脂を粉末樹脂が上回る伸びで抜いているそうです。これはレーザーまたはインクジェットのPBFの装置と材料進化により品質と生産性が向上し、このコラムでご紹介したメガネフレームや、少量量産車部品のように市販品量産に使われるようになったことが背景と推察します。

一方、キャデラックの高級BEV CELESTIQには115個のアルミや樹脂の3Dプリンティング部品が搭載されているものの、5年以内に低価格車へ適用されることは、生産性やコストの点で無いだろうとのことでした。また日本の3Dプリンティングについては、講演前に日本で数社訪問見学されたことからも、活用が遅れているわけではなく、全体規模の広がりにまだ時間がかかるだろうとのことでした。

講演者:
Reeves insight Ltd Managing Director
Dr. Philip Reeves

講演者はイギリスで長年3Dプリンターの研究開発やコンサルティングに携わってこられた方で、特に今回は、3Dプリンティングによる製造がサステナビリティに効果があるかの実証プロジェクトの例を複数紹介されました。サステナビリティやCO2削減が3Dプリンティング活用の狙いのひとつになってきたことも転換点のひとつだと思います。その例のひとつとして、イタリアのDyloan Bond factory社は、8000足生産販売されるデザイナーブランドスニーカーのメーカーロゴを見せる生地パーツ(下の写真は持参されたサンプルを撮影させていただいたもの)を、従来レーザーによる生地切り抜きや複数素材のボンド接着含む12工程で作るのに対し、Stratasys J850 Techstyleで生地直接3Dフルカラープリントによる1工程で作った場合の、原料、加工、廃棄に使う電力、水、排出CO2などを分析比較し、原料半減、CO2排出25%減、水使用3万リットル減の効果がある一方、3Dプリンター装置自体の製造には量産小型乗用車1台製造より多くのCO2排出が必要という、利点と課題の両方を示されました。
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講演者:
株式会社 デンソー 先進プロセス研究部室長
寺 亮之介 氏

「AMによる自動車部品量産を目指して」というご講演は、多くのすばらしい講演の中でも最もインパクトがあり、日本の3Dプリンティングの転換点になる内容だったと、おそらく筆者だけではなく、聴講された多くの方が思われたのではないでしょうか。とても濃く深い内容で、ここでは要点しかお伝え出来ないのですが、長年のハード、ソフト、材料、CAEにわたる調査研究の結果、量産自動車部品特有の要求要件に対し品質管理保証、経済合理性などから「AMは量産に使えない」とした上で、「できるようにするため」には、これまでユーザーとして「待ちの姿勢」から、ユーザーが目標値を明確に示し、必要な品質保証技術を関係各社共有しながら、日本が得意とする領域を活かしたAM開発により、普及の柱を作り進化させることに、これから惜しみなく協力されることを提言されました。このようなユーザーである実践先駆者の方の話には重みがあり、共感され今後賛同協力される方もおられると思います。それも含め、日本での3Dプリンティングが良く変わっていく期待が持てた展示会でした。

イベント予定のお知らせ

今月筆者も講演者として参加する予定の2つのイベントをお知らせします。2つともどちらかと言えばこれから3Dプリンティングを使おうとされる方を主な対象とした内容ですが、ご関心があればご参加ください。

①BtoBコミュニケーションセミナー 「業務用3Dプリンター入門」

開催日: 2月15日(木)
開催時間 : 15:00~17:00
会場: 日刊工業新聞社(住生日本橋小網町ビル)
料金: 日本BtoB広告協会会員【無料】、一般【5,000円】
主催: 一般社団法人日本BtoB広告協会、日刊工業新聞社
参加申し込みウエブサイト https://sharelab.jp/event/sharelab-240215

②「いまさら聞けない はじめての産業用樹脂3Dプリンティング」オンラインセミナー

開催日: 2月21日(水)
開催時間: 13:00-17:30
会場: オンライン(Zoom)
料金: 無料
募集人数: 500名(最多同時視聴者数)
募集締切: 2024年2月20日(火)18:00
主催: イントリックス株式会社 ShareLab編集部
参加申し込みウエブサイト https://sharelab.jp/specials/industrial-resin-3d-printing/

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