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国内AMをリードする方から学んだことは?掲載日:2023/09/28

実用部品製造、量産AM(付加製造)が日本国内で進まないと言われていますが、これに産学官の協働でチャレンジしていこうとする動きがようやく増えてきています。その中のイベントで国内AMをリードする方々から、みなさんにもヒントになる言葉を学びました。それはどのようなことかというと…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

「AM量産メガネフレームを実際使ってみた!」その後

9月中旬になっても各地で猛暑日が続きましたが、ここ数日朝夕の気温が急に下がり、半そで1枚で外に出たら涼しくて長袖を取りに帰ることもあり、1日の中で夏と秋があるような日が続いています。こればかりはしばらく着るもので調整していくしかないようです。

さて、今年の7月にこちらのコラムで、筆者が個人的にAMで量産されたメガネを買ったことをお伝えしました。そのときはどのメガネを買ったかはお伝えしませんでしたが、下のメガネです。

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ナイロン12樹脂AM製なのはフレームの部分で、造形後表面研磨と青色の染色がされています。また、AMらしい機能として、金属製テンプルとフレームの接続部は、一般に金属ヒンジとネジで組み立てられていることが多いですが、上右写真の赤丸部のように、内部に通常型成形できない形状があり、パチッとはめるだけの独特な構造になっています。これも含め、フレームサイズの大きさの割に軽く、テンプルの折り畳みも出来、仮に無理な力で外れても手で戻すことが出来ます。多少こじつけではありますが、金属部品点数が少なく、フレームも金型不要、製造上廃棄材料もほとんどないことから、メガネとしては環境に配慮した製造法の例としても参考になるかと思います。

その後、社内外でお会いした方々で、関心を示された方には実際に見たり触ったりしていただきましたが、「AMと言われなければわからない」という感想が多く聞かれました。毎日かけ続けていますが、特に問題も変化もなく、快適に使えています。

AM研究会委員会で学んだこと

さて、その日も外はかなり暑い日でしたが、先日9月13日に公益財団法人 日本金属学会 産学協創研究会 AM(Additive Manufacturing)研究会主催 第5日委員会が開催され、筆者も参加してきました。内容は下記ウエブサイトをご覧ください。

http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/msp6/nakano/news/#4762

実用部品製造、量産AM(付加製造)が日本国内で進まないと言われていますが、これに産学官の協働でチャレンジしていこうとする動きがようやく増えてきています。AM研究会もその一つであり、今回の講演者は正に国内AMをリードする熱意を感じられる産学官の方々でした。個々の内容はここでは触れませんが、話された中のいくつかの言葉は、3Dプリンティングを使っている、もしくはこれから使おうとしているみなさんにもヒントになると思いましたので、いくつかご紹介したいと思います。

①パネルディスカッション「AM産業実装のリアル~難しさと解決に向けた方向性」(三菱重工業株式会社 片岡 正人 氏 株式会社シグマクシス 常務執行役員 桐原 慎也 氏)から

片岡様は発電ガスタービン用ニッケル合金部品を2017年以降累計67,000個生産されてきた実績をご紹介され、1台目の金属3Dプリンターを導入されてから実用部品生産に至る道のりについて、

“「まず初めに『何に使えるか』から入るのではなく、設計者が『やりたい(がこれまでできなかった)ことが出来るか』から入ったのが成功の要因」
「従来工法との比較ではAMの苦手が目立ち、(関わる人が)ネガティブな印象を持ってしまう」 「始めは試作だけに使っていたが、AMを理解する設計者が徐々に増え、あるとき切削加工部品に問題が起きた時に『AMなら解決できる』と発想したことで付加価値のあるAM部品生産につながった」”

という主旨のお話をされていました。これは金属樹脂に関わらず、3Dプリンティングをうまく導入活用される方々に共通する考え方と導入後に起こることだと思います。

②AMテクノロジー トピックス紹介(第3回)(川崎重工株式会社 日比野 真也 氏)から

日比野様は社内でAM技術を活用する発想の2つのきっかけとして、「サイエンス起点」と「ビジネス起点」を示され、以下の社内実例を話されました。

“「サイエンス起点」の例 ガスタービン燃焼器での技術実証に活用

「ビジネス起点」の例 コンテナ船が故障で停泊すると1日20万ドル損失する解決策として、シンガポールで船舶のスペアパーツをAMで短期間に製造供給する「AMデータプラットフォーム」を構築 実例:鋳鉄製部品をSUS316LでAM製交換部品に“

この2つの視点はAM活用にどちらも重要な視点で、特にサイエンスもビジネスも、パーツ単体の機能、製造コストや利益だけでなく、その部品が関わるシステムの性能、コストや利益の方に視点を置いて検討することが大事です。

③閉会のご挨拶(前川 篤 副委員長)から

委員会の講演の中で、実際に苦労されてAM活用にたどり着いた方ならではのAMの技術的課題、使う難しさも改めて学びましたが、それを受けて前川様が次のように話されました。

“「足りないものを使うのが技術力である」”

これもAMに限らず、新しい工法や装置を使いこなしていくのに重要な考えだと思います。「AM装置は性能、品質、コストがまだまだ足りない」ことは事実ですが、「だから使わない」のではなく、「足りないものだから技術で使いこなせば、それぞれの価値や競争力になる」とのメッセージだと受け取りました。

その他、東京大学 生産技術研究所・所長 岡部 徹 先生からは、若い世代へのSTEAM教育の視点、経済産業省 製造産業局 素形材産業室・室長 星野 昌志 氏からは日本の素形材産業、エネルギーや環境対策、経済安全保障の視点からAMへの期待と国の支援について話され、とても学ぶことが多かった1日でした。

展示会、セミナーのお知らせ

これから来年初めにかけて、3Dプリンティングに関係する展示会、セミナーなどイベントが各地で多く開催される予定です。弊社丸紅情報システムズ株式会社が近日参加または主催するイベントもありますのでお知らせします。

第26回 関西 設計・製造ソリューション展(DMS関西)

開催日時 :2023年10月4日(水)~2023年10月6日(金) 10:00 ~ 17:00
会場 :インテックス大阪(〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-5-102) ブース番号:2号館 9-43
参加費 :無料(事前登録制)
主催 :RX Japan株式会社
出展製品
・ポータブル3Dスキャナ GOM Scan1 (ZEISS社)
・最新型ハンディスキャナ T-SCAN hawk2 (ZEISS社) 新製品
・AR目視検査 SuPAR (CDMVision社)
・金属3Dプリンタ バインダージェット方式 Shopシステム (Desktop Metal社)
・樹脂3Dプリンタ 光造形DLP方式 Origin One (Stratasys社)
・樹脂3Dプリンタ FDM方式 F190CR (Stratasys社)
・樹脂3Dプリンタ PolyJet方式 J55 Prime (Stratasys社)

参加事前登録はこちらの主催者ウエブサイトからお願い致します。
筆者も3日間ブースにいる予定ですので、ぜひご参加ください。
また3Dプリンティング関連ではありませんが、製造業向けの弊社主催イベントもありますので、以下にお知らせします。

【大阪開催】自動車業界における計測DX ~鋳造・樹脂に特化した3Dスキャナセミナー~

開催日時: 2023年10月3日(火) 13:00 ~ 16:00
会場: 新大阪ブリックビル3階(大阪府大阪市淀川区宮原一丁目1番6号)
アクセス: https://lasante-brick.jp/access/
参加費 :無料(事前予約制) 定員50名
<このような方におすすめします>
・3Dスキャナの導入を検討している。
・3Dスキャナの選定を他社がどんな理由で行ったのか知りたい。
・3Dスキャナの最新事例を知りたい。
・3Dスキャナを体験したい。
 内容詳細と参加お申し込みはこちらのウエブサイトをご覧ください。

【製造業向けウエビナー】社内情報取り扱いにおける運用の可視化 ~機密情報取り扱いの適切な運用方法~

開催日時 :2023年10月4日(水) 15:00~16:00
会場 :オンライン(Zoom利用)
参加費 :無料(事前登録制) 定員100名
内容詳細と参加お申し込みはこちらのウエブサイトをご覧ください。

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