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3Dプリンティングの「時間」その2掲載日:2017/04/05

3Dプリンティング。近年のブームのおかげで、広く知られ、様々な分野で使われるようになってきた一方で、正しく理解されていなかったり、よくわからなかったり、まだまだ知られていない使い方も可能性もあります。私も日々の仕事で「?」や「!」と思うことがしょっちゅうあります。みなさんもそうかと。

そこで、3Dプリンティングの達人や、これから使おうとされる方にも、3Dプリンティングの「?」や「!」ついて、これからこちらのブログで少しずつお伝えし、また一緒により良い使い方を考えていければと思います。

前回は3Dプリンティングの「時間」について述べました。今回はその続き…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

3Dプリンティングにおける「人の時間のメリット」

前回、3Dプリンティングがもたらす「人の時間のメリット」について
ものづくりの一般的な流れの中で、下記工程での例を挙げ、考えました。

①何を作るか1人または複数人で考える
②どの材料でどのカタチでどうやって作るか考えて決める
③作る人に頼む場合は、②を伝える

今回は残りの
④作る
⑤品質が良いか調べる
⑥使われる場所へ運ぶ
⑦使う
⑧修理するまたは捨てる
について例を挙げてみましょう。

3Dプリンティングで実使用品を作るメリット

モリワキエンジニアリング

④作る

3Dプリンターで直接実使用製品を作ることは、世界でも日本でも最近急に事例は増えているのですが、それでも全体からすれば極々一部であり、多くの人が目指してはいるものの、継続的に多量の製品生産に使われるケースはまだ少ないのが実情です。

例えば株式会社モリワキエンジニアリング様の事例では、レース用バイクの空気を前からエンジンに送るダクトをStratasys Fortus3Dプリンター とABS樹脂で作られましたが、これは従来CFRP(カーボン繊維と樹脂の複合材料)で作られ、型設計、型加工、原料シートの積層、硬化、仕上げなど、技能を持った多くの人が時間をかけて作らなければならず、レースごとに最適な形状のダクトを何個も短時間に作ることが難しかったことを解決されました。

部品そのものの性能やコスト以上に「人の時間」を大幅に減らし、その分技能を持った方の時間を別のことに有効に使えるという、2重のメリットが得られた例です。

このような使い方とメリットは、みなさんのものづくりの中にもきっとあり、まだ見つかっていないだけかもしれません。

品質を調べたり、モノを運んだりも「人の時間」は重要

⑤品質が良いか調べる

この工程も最近のIT技術で、画像やセンサーにより人より速く正確に測ったり品質検査をしたりできるようになっています。

例えば丸紅情報システムズが販売している3D測定機「ATOS SCANBOX」もその一つです。しかしまだ多くは「人」が行うことが多いのではないでしょうか。それゆえ、使う道具や検具などをよくすることで大きなメリットが生まれることがあります。

株式会社ヨロズエンジニアリング様の事例では、自動車のサスペンションなどの金属プレス部品の生産工場で、製品を置くことで形状や寸法を検査する冶具を従来はすべて金属の切削組み立てで作られていましたが、現在では大半の土台部分をStratasys Fortus3DプリンターとABS樹脂で作られています。

ここでの最大メリットは「軽さ」なのですが、単に樹脂化によるだけでなく、FDM方式3Dプリンターならではのスパース構造によるものです。

人が冶具保管場所から検査する場所へ運ぶときに、もちろん疲れだけでなく、金属だと2人運ぶものが1人で運べたり、万が一落としたりぶつけたりしたときの怪我のリスクを減らすことで、より大きなメリットとして作業される方々がより利益を生む仕事に時間を使えることにあります。

⑥使われる場所へ運ぶ

弊社が販売しているStratasys社の3Dプリンターが使われた事例としては、エアバス社が旅客機の樹脂部品を生産し始めた例が知られていますが、3Dプリンターで生産するメリットは軽いからとか、性能が良いとかよりも「サプライチェーンが自由になる」と伺ったことがあります。

それは、作る場所、機械、数、人がこれまでの作り方より選べる範囲が広がることと、この後で述べる ⑧修理するまたは捨てる でもメリットが大きいことだと考えています。

航空機の部品は他と比べても1個ごとに認証、記録、品質管理が厳密に求められ、検査や修理される場所が世界中にあり、運ぶ、在庫も含め人の工数や時間が多くかかること、それらが減らせるメリットは大きいことは想像できます。

使ったり、修理したり においても「時間」は大きな価値

⑦使う

この分野はとても広いので、ほんの1例ではありますが、サンビット株式会社様の事例から考えてみましょう。
ここでは、袋詰めうどんがバラバラに流れてくるベルトコンベアの上から、カメラとコンピュータにより、つりさげ式ロボットでつかんで、隣のベルトコンベアに整列して並べますが、そのロボットの先端に付き、空気の力でうどんを吸い付けたり離したりする「エアグリッパ」をStratasys uPrint 3DプリンターとABS樹脂で作られた事例です。

従来はメーカーが市販する金属と樹脂吸盤による標準品から選ぶしかなかったのですが、3Dプリンターで作れば運ぶモノごとに最適なカタチで軽いグリッパを作ることができ、その結果、1分間に運べる数が75個から100個に増やせたとのこと。

ここではグリッパそのもののメリットより、軽くしたことでロボットを早く動かすことができ、1個当たりの運ぶ時間を減らせたことが、このロボットの価値と、これを使われる工程での生産性を上げられるという、使うことでの大きな「時間」のメリットにつながることはお分かりかと思います。

⑧修理するまたは捨てる

先ほどの航空機部品の例にあるように、ある部品の修理や交換が必要になった時は、その飛行機、または機械は「働いていない」ことになり、その「時間」が長いほど損失が大きくなります。かといって、いつどこで壊れるかわからない部品を多量に作って在庫する、運ぶのもコストと時間がかかります。

筆者も「修理部品を3Dプリンターで作れないか」というご要望やお問い合わせを伺うことがよくありますが、元々の部品が切削や型成形で作られている場合、同じ設計形状で同じ性能を持つ部品を3Dプリンターで作ることは難しいことが多いのが現実です。でもこれは材料も作り方も違えば、同じものができないのは当然といえば当然です。

そこで、初めの設計から3Dプリンターで作ることを前提に部品を設計製造設計しておけば、交換部品も3Dプリンターで必要な時に必要な数を使う場所の近くで短時間で作ることができ、「働かない時間」を短くすることも夢ではなくなるというわけです。このことはこれから広がっていく、3Dプリンターの効果的な使い方と考えています。

使い終わった部品を捨てることも、人の時間とコストを必要とすることがあります。

例えば切削では複数の部品を作って組み立てなければできない形状の部品も、3Dプリンターでは一体で設計製造することができる例があり、捨てる時も分解する必要がなく、材料も1種であればリサイクル分別も不要です。

良いことばかりではないが、「良いこと」を使いましょう

これまで、3Dプリンティングは使えるのか?と、使うことにメリットについて述べてきました。

もちろんみなさんお気づきの通り、3Dプリンティングはまだまだ技術的にもコスト面でも、使いやすさでも足りないことが多く、良いことばかりではありません。

それでも世界中で多くの方々が多くの3Dプリンターを、こうして書いている瞬間にも使い多くのメリットを得られています。つまり、今日現在で使える「良いこと」を理解して、それをうまく利用されている方が、利益を得られていると言えるのではないでしょうか。

特に人の時間、それはお金に置き換えられる時間、そうではない時間含めてのメリットを得られていることが多いと考えています。

次回以降も、みなさんのものづくりに役立つ3Dプリンティングについて、みなさんとともに「?」「!」を見つけて、一緒に考えていきたいと思います。

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