丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。
一般社団法人電気自動車普及協会(APEV)はEV関連の事業や研究各種団体をネットワークでつなぐことによって情報の共有を図り、既存ガソリン車の電動化活動等を支援するとともに、既存および新規自動車メーカーのEV事業への参入を促進と、電気自動車の広報宣伝や政策提言を行うことによって、電気自動車の社会基盤整備を促進する目的で設立されました。
その活動の一つとして、大学、専門学校生を対象にした、デザインコンテストを開催され、前回の「国際学生EV 超小型モビリティデザインコンテスト2015」(結果はこちらをご参照ください)を継承発展させる形で「国際学生EVデザインコンテスト2017」を開催されました。ホームページはこちらをご覧ください。
弊社丸紅情報システムズは2015では協賛社として、「丸紅情報システムズ賞」を専門学校HAL大阪様のチームに贈呈し、副賞として作品の3次元CGデータからStratasys J750にてミニチュアモデルをフルカラー造形して進呈しました。
今回2017では、2015に続き受賞7チームに、コンテスト実行委員長 山下敏男様がデザイン、Stratasys Fortus450mcとASA樹脂により3Dプリントされたトロフィーを提供し、協賛させていただきました。
11月4日に東京モーターショー会場内で、最終候補に残ったチームによるプレゼンテーション、最終審査、表彰式が開催されました。結果はこちらを、最終審査作品ポスター縮小版はこちらをご参照ください。
今回のコンテストは前回以上に「国際化」したことに驚きました。国内チーム数に対して海外チーム数が半数強と上回り、最終選考には日本の5チーム、中国、インド、イタリア、ウガンダのチームが残り、中国の広州美術学院校が最優秀賞を獲得されました。作品は優劣つけがたく、皆さんの発想力、デザイン力、プレゼンテーション力の高さに改めて驚かされ、企業人も頑張らねばと刺激を受けました。
特にどのチームも3次元CG・CADによる立体デザイン、パース作成、またアニメーション、動画を駆使し、デジタルツールが普及浸透し、使いこなせることが普通になってきたことを実感しました。
その中で、最終プレゼンテーションに唯一3Dプリンティングによるモックアップを提示し、「カーデザインアカデミー賞」を受賞された、インド National Institute of Design校のTeam EV Indiaの皆さんに注目し、個別にお話を伺いました。インドからこのために来日され、受賞、3Dプリント製トロフィーも受け取られた後の皆さんの笑顔が素敵でした(右端は筆者)。
このチームの作品名は「NINJA(忍者)」で、2040年を想定し、都市部の人口集中、土地不足を解決するため住居や交通に水上を有効活用できるようにするため、地上を走る電気自動車がそのまま乗って水上移動できる新しい乗り物を提案されました。その斬新なデザインを表現するため、3次元CADでデザインし、そのデータからFDM方式3Dプリンターで出力、接着、仕上げ、塗装、デカール貼りをして、短期間で下記の模型を作られたそうです。
日本のチームではNTN賞を受賞された産業技術大学院大学様のチームが、パネルと共にFDM方式3Dプリンターと透明アクリルパネルを上手に組み合わせて、実際のスケール感や活用シーンをイメージしやすい模型を展示されていました。
今回のコンテストでは全体的に、今起きている、またこれから起きる様々な社会問題、エネルギー問題を正しくとらえ、それを電気自動車(「自動車」という枠にとらわれない「移動体」)と社会インフラ、情報通信、都市計画、ライフスタイルを組み合わせて解決しようという提案が多く、またそのような作品が受賞されたという印象で、このような若い方々がこれから世界で活躍されることに希望が見えました。審査員の方からも、「これほどわくわくしたコンテストは久しぶり」との声も上がりました。
一方、表彰式に続いて行われましたシンポジウム:「近未来の展望(-2050年)・EVが創る社会とデザインの役割」では、基調講演として小池百合子東京都知事が登壇され、特に東京都として伊豆・小笠原諸島で再生可能エネルギーと電気自動車などによるゼロエミッション化を推進するとのお話がありましたが、実現化には課題も多く、まだ緒に就いたところというのが現実のようです。
パネルディスカッションでは、世界的にも著名な現役カーデザイナーの3名、元日産自動車チーフ・デザイナー、専務執行役員の中村史郎氏、欧米で活躍され、その後新幹線などのデザインもされている奥山清行氏、トヨタ自動車でLexusブランドを立ち上げられ、現在ヤマハ発動機で執行役員デザイン本部 本部長をされている長屋 明浩 氏がパネラーとして活発な意見交換をされました。
その中で印象に残ったことは、自動車が電気化、自動運転化すると部品数が減り、自動車の販売も減り今の自動車産業が衰退するという見方がありますがそのようなことはなく、内燃機関自動車と併用され、それぞれの特長を生かした使われ方に変わっていき、むしろ拡大するとみられているとのことでした
また、電気自動車は簡単に作れるので、新規参入が増えるとの見方について、「作れる」と「良いものを作る」は違うことであり、また自動車は命を運ぶ「サバイバー」であることを忘れてはならず、同時にヒトが生きていくのに必要な「ファン(楽しさ)」を失ってはならず、その両立のためのデザインやものづくりが重要とのことでした。
筆者はシンポジウム終了後に東京モーターショーを見て周りましたが、前回のモーターショーでは多かった、「カロッツェリア」と呼ばれる小企業の特徴ある自動車の展示が少なくなったのは残念でしたが、その中で、愛知総合工科高校が出品されていた「たためる自動車」は独創的で、土地の狭い日本ならではの発想だと思いました。
お話を伺ったところ、ホイールキャップや内装の部品は樹脂FDM方式の3Dプリンターで作り、塗装したとのことで、ここでも学生の皆さんは、上手に3Dプリンティングを使われていました。
この様に、電気自動車はこれまでの内燃機関と違い、例えば車輪の中にモーターを入れるなど、全く異なる構造やデザインが出来るのがメリットの一つですが、その分デザインや設計に於いて立体物で伝える、評価することの重要性は増すので、3Dプリンティングの活用は重要だと思います。もちろん実用部品としても「軽さ」の重要度は増し、樹脂や複合材料の活用が増える中で、設計自由度が高く、型を使わない3Dプリンティングによる生産がより使われると考えられます。
その他上記のシンポジウムで電気自動車の将来についての専門家のご意見は、3Dプリンティングの将来にも当てはまることが多いと気づきました。
・エンジンの電気化は単にエネルギーや環境問題解決のための「代替」として考えるべきではない。電気ならではでできる新しいことに使うべき。例えば住居と一体活用するなど。
→3Dプリンティングも同じく、既存工法の問題解決の代替手段ではなく、3Dプリンティングでできる新しいものづくりに活用すべき。
・腕時計、楽器の進化の歴史と同じように、電子化がすすんでも、機械式、アナログのものは廃れないどころか、別の価値を生む、欠かせないものとして残り、成長する。
→3Dプリンティングも同じく、普及が進んでも従来工法はその特長を生かす形で更なる進化と成長が見込まれる。
・電気自動車単体では大きな価値を生まない。エネルギー、インフラ、社会など全体を考えて提案する力がデザイナーに求められる。また普及教育には実体験できる「センター」が必要。
→3Dプリンティングも同じで、3Dプリンターだけでは大きな価値は生まれず、まずものづくりに関わる人を増やす、アイデアを増やす、作る-運ぶ-在庫する-使う-捨てるのサプライチェーン、バリューチェーン全体で価値を生むための道具として使うべき。また体験できる場を増やすことが必要。
以上筆者の個人的な見方ですが、電気自動車も3Dプリンティングも、実は開発活用の歴史は長く、かつ最近急に脚光を浴び、改革の波が押し寄せる中で解決すべき課題も多いものの、それらはこれから多くの人の理解が進み、アイデアや工夫で乗り越えて、人間の生活に役立つものになる可能性をもつという共通点が多くあり、共に影響しあいながら成長していけるという期待と希望が見えた1日でした。
みなさんはどのようにお考えでしょうか?
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