丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。
野球が好きな方にとって、この時期はプロ野球の日本シリーズがありそれぞれ楽しまれていると思いますが、アメリカのプロ野球 メジャーリーグでも全米一を争うワールドシリーズが開催されています。
そのような中、3Dプリンティングのニュースを数多く発信しているネットニュース Makepartsfast が2017年10月26日に下記の記事を配信しました。
「7歳の少女Hailey Dawsonちゃんが、Stratasysによる3Dプリントカスタム義手でワールドシリーズ第4戦始球式へ」(筆者和訳)
ニュースURL
Stratasys社Facebookの画像
MLBのニュースサイトでの記事
記事を要約しますと、Haileyちゃんはポーランド症候群と呼ばれる先天性欠陥により義手を必要としますが、従来の製造法で作られるカスタムメイド義手は1つ2万5千ドルもし、さらに成長する子供ではいくつも作り変えないとなりません。そこで母親は苦労して探した末、ネバダ大学ラスベガス校(UNLV)が3Dプリントカスタム義手を作ることになりました。この義手によりHaileyちゃんは他の子どもとほぼ同じような活動ができるそうです。
野球ファンのHaileyちゃんは2015年にネバダ大学ラスベガス校の野球チームの始球式で初めて投げましたが、その後アメリカメジャーリーグ全30球団の始球式を務めるという目標を立てました。
それが伝わり、これまでにすでに2球団の始球式を務め、残り28球団からも招待を受けています。そして現地時間10月28日(土)全米No.1を決めるワールドシリーズ ドジャース対アストロズ戦の始球式を務めることになったのです。
筆者は日本でのテレビ生中継を見ましたが、義手の甲にワールドシリーズのロゴが刻印され、全体を金色に塗装された特注義手を付けたHaileyちゃんは、とても堂々と、下投げノーバウンドで上手にボールを投げて、大喝采を受けていました。義手にその場で選手のサインをもらい、記念写真を撮ってもらったHaileyちゃんの笑顔はとてもすてきでした。
Haileyちゃんの母親は、30球団の始球式という目標達成を支援し、それを通じて同じポーランド症候群の子供たちを助けたいと考えています。周りの3Dプリンティングを理解している人たちの助けによって、カスタム義手が2,000ドル、もしかすると200ドル近くでできるかもしれないことを知ってもらいたいとのことです。
UNLV校は10年以上Stratasys社3Dプリンターを使い、今回の義手は Fortus 250mc やFortus 400mcで作り、これまでもこれからも、少しずつ改良、また電動化を研究開発していくそうです。
大学関係者によると、この義手の研究開発は学生の学習、体験にも大変有意義だそうです。また義手の指小さい部品の穴に細いケーブルを通し、それを腱として引っ張ったりゆるめたりして動かすもので、Stratasys Fortusで作る部品は、そのような複雑な部品を正確に作り、出来たものはそのまますぐに組み立てられるので、義手開発製造にはとても重要な道具であるとのことです。
テレビなどでも取り上げられることが多いのでご存知の方もいらっしゃると思いますが、ひとつの例として、大手メーカーの元エンジニアたちが設立したイクシー社では、動かせる筋肉の電気信号により動かすことの出来る筋電義手「Hackberry」の主要な構成部品をはじめから3Dプリンティングで作ることを前提に開発設計し、NPO法人Mission ARM Japanを通じ、部品の3Dデータや動かすためのプログラムを配布され、また体験用貸出や、研究用にキット有償提供を行なわれています。
筆者が2015年にHackberryを知り、開発のお手伝いとしてとして、Stratasys Fortusの材料の中で紫外線劣化が少ないASA樹脂(黒色)で、すべての樹脂部品を作り提供しました。その際にいくつかの部品について、3Dプリンタの特性を考慮した形状改善提案もさせていただきました。実際に組み立てていただき、動かすことも出来ました。
もちろん、3Dプリンティングがすべての要求を満たせるものではなく、改良の余地は多々ありますが、体形や使い方、コストも含めて使う人それぞれに合った装具をより容易に作り、使うことが出来るようにする道具として、3Dプリンティングは大きな可能性があります。
今後もこのような新しい活用例をこのコラムで紹介していきたいと思います。
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