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ジャスト・イン・タイムと3Dプリンティングの関係は?掲載日:2024/03/06

ご存じの方も多いトヨタ自動車のニュースサイト「トヨタイムズ」で、豊田章男会長の講演記事をいくつか読む機会があり、その中で「ジャスト・イン・タイム」のキーワードは「リードタイム」であるとおっしゃっていました。それと3Dプリンティングの関係は…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

本当の「ジャスト・イン・タイム」とは?

うるう年の2月も終わり、春が待ち遠しい季節になってきましたが、年々暖かくなるタイミングが早まっているようで、それがなおさら月日が経つのを速く感じさせているのかもしれません。国内では円安、株高、賃金アップなどがニュースのキーワードで聞かれる一方、前回のバブル経済の時と日本の平均賃金がほぼ同じであり、デフレ脱却にも労働生産性を高めなければならないなどのコメントも良く聞きます。そのような中で、日本の産業の柱であり、550万人が関わるとされる自動車産業のトップの言葉から知った、これまでわかっていたようでわかっていなかったこと、良いやり方と信じていたことがそうではなくなっていることと3Dプリンティングとの関係が今回の話題です。

テレビCMを通じてご存じの方も多いと思いますが、トヨタ自動車の広報ウエブサイト「トヨタイムズ」で、豊田章男会長の講演記事をいくつか読む機会があり、「わかってたつもりだったけれど実はわかっていなかった!」ということがいくつかありましたので、まずは以下に抜粋引用して紹介いたします。

出典:https://toyotatimes.jp/toyota_news/1054.html

“「ジャスト・イン・タイム」とは、「リードタイムを限りなく短縮する」ことであり、「自働化」とは、「異常がわかる」「異常で止める」現場を具現化するものです。”

出典:https://toyotatimes.jp/spotlights/091.html

“ジャスト・イン・タイムとニンベンのついた自働化っていうのを、入社以来ずっとその2つが2本の柱とされて、ずっと分かったような気になってると思います。
(トヨタの社内では)“TPS=効率化”と捉えられ、そして、それで「仕事のやり方を変えるんだ」ということが、ほぼ目的かのごとく語られていますけど、目的はあくまでも“誰かの仕事を楽にしたい”ということですね。そう考えるのが、一番わかりやすいんじゃないのかなと思います。”

“続けて、豊田社長は2本柱のもう1つ「ジャスト・イン・タイム」について説明した。
これは、佐吉の息子であり、トヨタ自動車の創業者、豊田喜一郎が導入した考え方だ。ジャスト・イン・タイムの説明には「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」というフレーズがよく使われる。
しかし、このフレーズを巡って、豊田社長はやはり独特の説明をしはじめる。キーワードは「リードタイム」である。リードタイムとは「受注からモノ・サービスの提供までに掛かる時間」を意味する言葉だ。“

“例えば、お寿司の世界ね。
スーパーへ行くと完成品(在庫)が並んでいますよね。ところが、ちゃんと目の前で握ってくれるお寿司屋に行くと、握る人のところに在庫って置いてある?置いてないでしょう。
それで、ネタは切ってある?切ってもいないね。
注文が入ってから「はいよ」と言って、その材料を取り出して、切って、段取りして、握って、出す。何が言いたいかというと、リードタイムさえ短くしておけば、それは可能なわけでしょう。
ところが、前もってつくっておきましょうなんていって、1000万台のお客さん相手に、どういうスペックか?なんてできないでしょ…と。
できないことは、できない。じゃあ、それで何をするか?というと「リードタイムを短くしておこう」ということが大切になる。“

筆者は約30年前になりますがトヨタ自動車の樹脂部品をメーカーで設計していたこともあり、ジャスト・イン・タイムも「カンバン方式」の基になる考え方で、製造における仕掛り在庫と不良品を減らす、またムリ・ムラ・ムダを減らす仕組みだと思っていました。でもそれは開発から納品まで、お客様に、必要なものを必要な時に届けるためにリードタイムを短くしておくことが本当のジャスト・イン・タイムだったのかと、今更ながら知りました。その上で改めて考えると、これまでジャスト・イン・タイムと3Dプリンティングは遠い関係のように思っていましたが、3Dプリンティングは研究開発においても、製造、在庫、物流においてもリードタイムを短くすることに使え、上記のお寿司のように多様なお客様のニーズにジャスト・イン・タイムで製品を提供し、それなら高い価格でも買ってもらえるビジネスの実現に有効なのではないでしょうか。TPS(トヨタ生産方式)は幅広い産業の企業で採用され効果を出していることからも、ジャスト・イン・タイムや「誰かを楽にする自働化」の有効性は自動車関連以外の企業にもあてはまり、労働生産性の向上にもつながると思います。

正解が無い時の「DCAP」

もうひとつ、これもメーカーで働いていた時から「仕事とは、品質管理とはPDCAサイクルを回すこと」と教えられてきたことが、今や正解ではないことも学んだ部分を引用します。

出典:https://toyotatimes.jp/toyota_news/1055.html

“まず、「変えちゃいけないこと」と「絶対やっちゃいけないこと」を明確にしました。
それ以外は時代に合わせて、変えていかなければ、企業は持続的、永続的に発展していかないだろうというのが私のベースにあります。
ただ、ちょっと状況が変わってまいりました。現在は正解がないんです。例えば、カーボンニュートラルなど、正解がないときにどうするか。
かつて自動車産業では、米国や欧州が先を走っていましたので、そこよりもうまくやろうと戦ってきたと思います。
ですが、先頭を走り始めた今、CASEなどの大きな変化点がある中、トヨタがやっていることが必ずしも正解ではない。ただ、何かしらの変化をしない限りは必ず衰退してしまいます。
かつて「Plan・Do・ Check・ Action(PDCA)」と言われていましたが、「Plan」を最初にやっていると、おかしくなっちゃうんです。だから、「Do」を最初にやる。“

要はこれまで良いと信じていた「PDCA」ではなくトヨタ自動車は「DCAP」を回すとおっしゃっています。これも自動車メーカーに限ったことではないと思います。この「Doを最初にやる」、また以前このコラムでお伝えした「まず作ってみる」のにも3Dプリンティングは有効だと思います。

そのようなトヨタ自動車が3Dプリンティングを活用された例が下記の動画の中に ありまセンチュリーとクラウンの特別な1台だけのオープンカーを自社グループ内で開発製造した話題ですが、その中にStratasys F900にて座席後部の実用部品を作ったとの紹介がありました。(12分44秒からが上で紹介した場面です)。

もちろんこれは3Dプリントだけでなく、塗装仕上げされた技術も素晴らしいのですが、技術者の方々のコメントの通り、初めに正解のないものづくりに「DCAP」を実践されたのではないかと思います。クラウンオープンカーは様々なイベントに貸し出されるとのことなので、どこかで走る姿を見てみたいですね。

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