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青森大学 導入事例

Dimension

コンピュータ上の3次元データを、自動的に立体造形するシステム。ABS樹脂を造形材として使用し、その特性を活かしてさまざまな機能テストにも対応します。
コンパクトな筐体でオフィス環境でも利用できる60dB以下の静寂性を備え、デザイナーや設計者がネットワークプリンタを利用する感覚で、3次元モデルをデスクサイドでも出力できる3Dプリンターです。

Dimension
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1966年
早稲田大学第一理工学部電気通信科卒

1970年
東京大学理学系研究科数学専攻卒 理学修士

1972年
株式会社日本ユニシス(当時の日本ユニバック)入社  以後28年間勤務後現職

縄文土器の再現に3DプリンターのDimensionを活用

青森大学ソフトウェア情報学部では、青森デジタルアーカイブ推進協議会と連携してさまざまな研究を行っています。縄文土器の再現もそのひとつ。縄文の文様 を採用した商品の開発に向けた研究では、手軽に文様を再現化できる手段としてラピッドプロトタイピングが活躍しています。


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まず、先生が現在の研究に至る経緯についてお聞かせください。

上谷教授:

大学に来る前は、一般企業で自動車のデザインのためのソフトウェアとハードウェアを開発していました。元々はCGのレンダリングが専門だったんですね。 で、大学ではソフトウェア情報学部ということで何をやっても良かったのですが、ここで出会ったのが「青森デジタルアーカイブ推進協議会」だったんです。デ ジタルアーカイブを通して新産業の創出や新文化の創造を推進することによって青森を盛り上げようというプロジェクトです。


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デジタルアーカイブというと、伝統的なものや価値の高いものを
デジタル化して保存していくということですよね。
具体的にはどのようなことに取り組まれているのでしょうか?

上谷教授:

いろいろやりましたが、ひとつは棟方志功さんの版画のレプリカを作製しようというもの。これは、特別仕様のカメラにより可視光を16色に分割して版画を撮 影します。通常のカメラがRGBの3色ですから、かなり細かく撮れますよね。そうやって撮影したものを、今度は16色専用のカラーマネジメントを開発して プリントするわけです。プリンタそのものはありふれたものを使うのですが、実際に刷り上がったものは、専門の学芸員からも「見分けがつけにくいほど似てい る」と言ってもらっています。いわゆる「版画の刷り」独特の味も再現できて、我ながら会心の出来だったと思いますよ。
また、青森ならということで、ねぶたを3次元で計測して再現するというプロジェクトや、津軽塗の伝統工芸士会と協力して津軽塗のPRサイトの制作などにも 取り組んでいます。特にねぶたなどは一度きりのものですし、最初から作っていく過程をデジタルアーカイブとして後世に伝えていく価値は高いと思います。


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現在は縄文土器の再現にも取り組まれ、
それに3Dプリンターも活用されているとのことですが、
きっかけはどのようなことだったのでしょうか?

上谷教授:

青森にはデジタルアーカイブに値する伝統工芸などがたくさん存在していますし、先述の津軽塗伝統工芸士会のように、現場の方たちも保存には積極的です。し かし一方で、青森デジタルアーカイブ推進協議会そのものには潤沢な予算はないのが実状。そのため、デジタルアーカイブの活動そのものをある程度、独立採算 性にて進めていく必要がありました。つまり、事業化を目的とした活動にしなくてはなりません。そこで思いついたアイデアが、縄文土器を再現して商品化でき ないかというものでした。


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縄文土器の一部

縄文土器の一部。

なるほど。青森といえば、有名な「亀が岡遺跡」の
遮光器土偶をはじめ、数多くの縄文時代の土器が発掘されていますね。

上谷教授:

そうです。ご存じのように、縄文土器というものは非常に優れたデザイン性を持っています。造形はもちろん、文様もですね。非常に力強く繊細でもあります。 現代人にはデザイン出来ないのではないかと言う専門家もいますところが、それだけの優れた芸術品であるにもかかわらず、青森においては縄文土器というのは 単なる歴史的文化財にすぎないのです。遺跡からの発掘品として調査・保存し、文化的な展開はするものの、それを経済的に活用しようという考え方はなかった んです。
そこで、縄文土器を文様も含めて再現し、レプリカや縄文文様を生かした焼き物や硝子細工の創作食器を商品開発してみようと思ったわけです。もっとも、この アイデアは最初に縄文土器を見たときに「これをジョッキにしてビールを飲んだらさぞかし美味しいだろうな」と、ふと思ったのがきっかけだったんですけど ね。


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Dimensionで造型した縄文土器のレプリカ

Dimensionで造型した縄文土器のレプリカ。

再現というのは、具体的にどのような手順で行われるのですか?

上谷教授:

まずは、レーザーによる3Dスキャンを行います。これを3D CADでデータ処理して、ラピッドプロトタイピング(3Dプリンター)で樹脂の模型として出力。それを石膏で型どりして、焼き物や硝子細工へと応用することになります。
青森には金山焼や北洋硝子といった有名どころがあり、こちらの方にも意見を聞いてみたところ、その再現手順は十分に可能だとのこと。縄文土器を保存している博物館など、各方面と協力しながら実現に向けて取り組んでいます。


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縄目の文様部分を再現したもの

縄目の文様部分を再現したもの。

これは、再現の手順として既に確立されているのですか?

上谷教授:

基本的な手順は問題ないのですが、文様の再現においてはまだ2点ほど課題を抱えています。
ひとつは、文様の読み取りの精度。縄文土器の文様はきわめて精細で、わずか0.1mm程度の細かい切れ込みがたくさんあります。しかも、その切れ込みの角 度もさまざまで、これらを忠実に再現するには、現在の3Dスキャナの解像度ではやや厳しいところもあります。ただ、こうした技術的な面は日進月歩であり、 いずれ解決できる問題だと言えるでしょう。
もっとも、飲み屋の女将さんに言わせると「そんなに細かい模様があったら洗いにくくて大変」という意見もあるので、このあたりは再現性と実用品としての使い勝手のバランスでしょうね。
もうひとつは、文様だけを抽出して利用するための方法論の確立です。単純に元の形を再現するだけでは、商品化にはつながりません。縄文の文様を立体的なデザインの素材として抽出し、

それをさまざまな形状のものに貼り付けられるようにする必要があります。これができれば、たとえば縄文文様の茶器やティーポット、あるいは風鈴など、いろいろな商品へと可能性が広がりますからね。

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それでは、この研究におけるDimensionの使い勝手をお聞かせ下さい。

上谷教授:

ラピッドプロトタイピングによってデータから実物にすると、想定していたものと大きく変わってくることがあります。たとえば、文様のシャープさなどもそう ですね。データの段階ではそれなりにいけるかと思っていたものが、いざ出力してみたら、文様がなまってしまって話にならなかったということもあります。そ うしたトライ&エラーを繰り返すには、Dimensionが適していると言えるでしょう。なんといっても低価格ですし、扱いやすさもあります。実際、学生 でも問題なく利用できて、卒業論文のための研究にも利用しています。実際の商品化に向けた高精細なラピッドプロトタイピングには力不足かもしれませんが、 日常の利用には最適なのではないでしょうか。


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最後に、先生の研究に対するポリシーと
今後の展望についてお聞かせください。

上谷教授:

私の研究に対する考え方は、人や社会に「役に立つ」研究を行うということ。実生活の中で役に立つものを研究し、作っていきたいですし、学生にもそれを伝えたいですね。
また、今後は研究過程で得られたノウハウを多くの人に伝えることをめざしています。「デジタルミュージアムグッズ制作技術者育成プロジェクト」として厚生 労働省より助成金が支給されましたので、今回お話ししたようなデジタルアーカイブ制作のノウハウを伝達していきたいと思います。


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