CASE STUDY活用事例

Built-Rite Tool & Die

  • Built-Rite Tool & Die
    • コスト削減
    • 開発期間短縮
    • Studio システム

    米国の射出成形会社、Built-Rite Tool & Die社は、Desktop Metal社のStudio システムを活用し、入れ子構造金型を製造しました。
    その結果、90%のコスト削減、30%の時間短縮、さらにパーツを41%軽量化することに成功しました。
    この事例から、どの業界においても参考となるヒントが得られるかもしれません。

Overview

Built-Rite Tool & Die社は、精密金型を専門とする、米国マサチューセッツ州にある老舗の金型製造・設計会社です。同社は、プラスチック射出成形金型加工に特化しています。これらの金型は複雑な形状のため、広範な検討と、正確な加工が求められます。

挑戦
Built-Rite Tool & Die社のような中小企業では、国内外の他社からの競争圧力が高まっています。また、海外メーカーは低価格化を進め、また米国国内の試作業者も少量部品の製作納期が短くなってきています。そこで、Built-Rite社は金属3Dプリンティング技術によって、米国内の試作業者よりもリー ドタイム短縮と金型製作のコスト削減を実現しました。それにより迅速な反復修正が出来ることは、受注競争に勝ち、短納期にも対応するためには大変重要です。
同社ではDesktop Metal社のStudio System™導入活用により、自社工場の他の加工機械よりもはるかに工数がかからず、また社外に外注するよりも低いコストで、入れ子構造金型を製造することが可能となりました。StudioSystem™を活用すれば、クローズドセルインフィル(中空の中埋め方法)を 使用することで金型としての耐摩耗性を損なうことなく、入れ子部品を軽量化かつ材料消費を最小限に抑えて造形することができます。

  • 課題
    金型製作費用が高価
    リードタイムが長い
    パーツ形状が複雑
  • Studio System™の利点
    パーツ毎のコストと材料消費を削減
    自社での反復修正
    複雑な設計も可能

技術適合性のアセスメント

  • プラスチック射出成形は、大量にパーツを生産する加工法です。高圧の溶けたプラスチック材料を金型内のキャビティ(空洞)に注入して部品を成形するものです。大量生産の場合、射出成形は、部品毎のコストが低く、再現性があり、捨てる材料を最小限に抑えます。プラスチック加工の約32%が射出 成形で作られ、主要な製造方法になっています。

    金型製作工程は広範囲にわたるため、お客様の納期、反復修正、および部品品質への期待に応えるべく、正確な計画と実行が必要です。金型は、多くの複雑なキャビティ、入れ子、および冷却回路で構成されています。金型は、 繰り返しの衝撃と高温樹脂に耐える必要があり、耐摩耗性が重要となります。また金型の製作が高価であることと、リードタイムが長いことも課題です。設計の変更は時間とコストに大きな影響を与える可能性があるため、迅速な反復修正ができることは工程全体の効率化にとって重要です。

    Studio System™はBound Metal Deposition™(BMD)と呼ばれる技術を使用し、金属棒(金属粉末とポリマーバインダー)を加熱してビルドプレート上に押し出し、グリーンパーツを1層ずつ積層します。部品は、デバインダーで専用の溶媒に浸され、焼結炉で焼結されます。 3点構成のシステムは、社内の金属3Dプリントを一気通貫として出来るように設計されています。

  • 中埋めの役割
    下の2つの写真の金型入れ子は、部品全体のインフィル構造を示すために一部を切り取られています。上の天面視写真は、部品が軽量化される際に使用される三角形の中埋めパターンを示しています。下の側面視写真は、必要に応じ て、部品の外郭厚さを選択的に増やす機能を示しています。この入れ子の場合、キャビティ面をより厚くすることで後仕上げ加工が可能になり、耐久性が維持されます。

評価

射出成形金型には、組み付けが出来る厳しい公差と、成形品の離型のために、射出されたプラスチックと接触する表面の研磨仕上げが必要です。 焼結されたままの状態で、まず下記2つの後仕上げ加工について加工条件と材料の挙動を観察し、その後機能テストを行いました。

  • 01 表面研磨
    Built-Rite社において、3Dプリントされた金型入れ子に必要な公差と表面仕上げのために研磨をします。
    そこで特別な工程が必要になるのかどうかを評価し、また部品が他の工具鋼と同様に加熱できることと、寸法や金型組み付けに問題がないことを確認しました。
  • 02 放電加工(EDM)
    入れ子のキャビティー表面に必要な表面仕上げのために放電加工を使用し、パラメータ設定を変える必要性や、電極の摩耗、および表面の仕上がりを評価しました。
    その結果、3Dプリントされた部品のEDMのパラメータを変更する必要はなく、電極の摩耗や表面の仕上がりに関しても、3Dプリントでない入れ子と同程度であったことがわかりました。
  • 03 機能テスト
    3Dプリントした入れ子の後仕上げ加工後、それを金型に組み付け、ポリアセタール材料のプラスチック部品(非研磨性、低摩擦プラスチック材料)の生産に使用しました。
    金型に注入されるプラスチックの温度は約205℃、そして金型自体は約82~121℃に保たれます。約100ショット成形されたプラスチック部品には欠陥が見られず、また入れ子自体にも摩耗の兆候は見られませんでした。

まとめ

この評価が成功したことによって、Studio System™の射出成形金型への活用の可能性が示されました。このStudio System™により射出成形金型メーカーは外注に頼ることなく工程改善が出来るなどの積層造形のメリットに気づくことができます。

メリットはそれだけではなく、材料を削減できたり、クローズドセルインフィル(中空の中埋め方法)を使用すれば、金型に必要な耐摩耗性を維持しながら、コスト削減と部品の軽量化につながります。予期しない設計変更や短い納期であっても、Studio System™があれば、金型メーカーは外注するよりも低コストで設計修正サイクルをより迅速に繰り返すことができるのです。

Studio System™が持つ設計自由度の高さを活用して、金型のキャビティの形に沿った最適冷却水路を備えた金型入れ子を作成することも、今後の評価に含まれています。

これにより、従来の加工法よりも型温の均質化が出来たり、設計品質を安定させるために、射出した後すぐにプラスチック部品の冷却を効率よく行うことができます。

今後のテストでは、金型用に一般的な材料であるH13工具鋼による3Dプリントも行われる予定です。

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