製造ソリューション事業本部

TEL : 03-4243-4123

2023年の3Dプリンティングはどうなるか?掲載日:2023/01/10

2023年最初のコラムは、毎年恒例、今年の3Dプリンティングはどうなるかについて予測をしたいと思います。世界的な経済、資源、物流の不安定さは残るものの、全体には長いトンネルの出口に向かう中、3Dプリンティングも転換点を迎えるとみていますが、それは...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

今年も宜しくお願い致します

新年あけましておめでとうございます。このコラムも2017年から始め足掛け6年目を迎えますが、今年も筆者が見聞きして気付いたこと、疑問に思ったことを中心にお伝えしていきたいと思いますので、引き続きご愛読のほどよろしくお願い致します。

さて、2023年最初のコラムは、毎年恒例、今年の3Dプリンティングはどうなるかについて予測をしたいと思います。世界的な経済、資源、物流の不安定さは残るものの、全体には長いトンネルの出口に向かう中、3Dプリンティングも転換点を迎えるとみていますが、まずは3Dプリンティングの境界と視野を拡げる海外情報をお伝えしたいと思います。

ドイツで1995年から3Dプリンティングの最新技術を活用し、設計から製造、品質管理まで様々なサービスを提供されているFIT AG社の子会社であるadditive tectonics社は、DIGITAL CONCRETEという、バインダージェッティング法に属するSelective Cement Activation (SCA)という技術による大型の3Dプリンターを開発し、それによりドイツRegensburgで有機的複雑形状のビル外壁(ファサード)を2023年までに作っているそうです。詳しくはこちらのウエブサイトをご覧ください。

原料紛は70%がガラスリサイクル材料とのことで、このプリンターではセメントや木粉含め様々な材料で、大きな一体物生産から、小さい部品の多数生産まで出来るとのことです。

また同社は新しいアートプロジェクトについても公表しています。ドイツSprengel Museum Hannoverという美術館内で、画家であるPeter Langs氏がVRシステムを使い、離れたところから大型ロボットアーム材料吐出法(MEX)プリンターを操作しながら、アイスランド沖の島の崖から着想したSKERというオブジェを作るいうもので、リグニンという植物由来樹脂に、画家がVR内で選んだ色を、別のロボットが24種の着色剤から自動配合して着色するというものだそうです。内容は約6分弱ですが、お時間があれば下記動画をご覧ください。


2023年の3Dプリンティングはどうなるか?

上記の例もヒントになりますが、2023年は3Dプリンティング全体として、いくつかの転換点を迎えるのではと予測しています。

・これまでの境界が変わる

これまでの3Dプリンティングには、様々な、また意外と狭い「境界」があり、これからもありますが、ある領域ではそれを大きく広げる技術、システムが出てくると思います。

材料の境界
金属、樹脂含めどちらかというとこれまでの開発は既存材料に近い、または近づける材料をという境界から、今または将来の需要から遡った、境界を越えた製造法、組み合わせにより開発される例が増えてくると予測しています。それは非石油系、非鉄系、リサイクル・アップサイクル、粉末やフィラメント以外の形態なども含まれます。

数の境界
これまでは作るべきは1個から少数という境界がありましたが、時間当たりの生産個数の境界が大きく増えると予測しています。それは例えば上記の例にあるようなバインダージェッティングや材料吐出量増加、DLPなどプリンターによるものもありますが、前後工程の自動化、多量バッチ処理化などプリンター以外の変革との組み合わせによるものと考えています。

大きさの境界
これは既に海外装置メーカーが盛んに大型プリンターを開発発売していますが、この流れはさらに加速して境界を拡げると予測しています。一方、3Dプリンターの場合、多数台のプリンターで分割部品を並行生産し、あとで組み立てる方が良い場合もあるので、上記の数の境界拡大と合わせ、大きいものを作る選択肢は増えると考えています。もちろん逆の小さい方の境界も拡がるでしょう。

特に日本については、これまで3Dプリンティングが使われやすい産業の境界の狭さが海外に対する遅れの要因という見方がありましたが、宇宙産業、防衛産業、歯科産業で新たな動きが出てきていますし、環境・エネルギー、ロボティクス、半導体も待ったなしの需要を背景に、また以前は急成長期待の投機的で不安定なお金から、安定利益を得る投資的で安定したお金による3Dプリンティング関連ビジネスへと移っていく傾向にあり、それが明るい兆しですが、一方で国産主義、自社自前閉鎖主義が残り続けると機を逸する危惧もあります。

前述のadditive tectonics社のプロジェクトも1社だけではなく、数社が関与していることがわかります。また「Catena-X(欧州自動車業界のカーボンニュートラル戦略)」でウエブサイト検索をしていただくと多くの日本語による解説が出てきますが、欧州自動車産業でも競合、サプライチェーン上下、企業規模大小の境界を越えて基本の部分を共創共有することで直面する変革の課題を地域産業のプラスにする動きが多数みられます。解説では「日本では同様の動きが見られない」「日本には合わない」ような表現が見られますが、日本でも個人、企業、業界の境界を拡げたり変えたりできるかどうかが2023年の転換点を左右するのではないでしょうか?

年末年始のニュースで、今年の日本経済の見通しについて「日本が優位になる産業分野を選択、注力できるかがカギとなる」というコメントを聞きました。またアメリカで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2023の様々なニュースでは、MoT(メタバース  オブ シングス)や、サステナビリティ、ヘルステクノロジーというキーテクノロジーが注目され、以前よりモビリティは展示が減ったり、コロナ禍によりITやデジタルテクノロジーの限界が表面化した半面、ハードテクノロジーを活用して、見せかけではない実質サステナブルな製品が見られたりと、地道な取り組みも見られたようです。ますます先の見通しが難しい年になりそうですが、感染拡大出口の先を見てこれまでの境界を越えて進む皆さんのお役に立てる年にしたいと思います。

3Dプリンターのことなら
お気軽に当社へ
お問い合わせください

TOP