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「他力活用」が日本の3Dプリンティングを変える?掲載日:2023/01/24

平年より厳しい冬の気候の中2023年が始まりましたが、3Dプリンティング関連でも様々な有人対面のイベントが次々に開催、または計画されています。その中でこれまでと違い「他力活用」の話題や促進の機運が日本でもようやく増えてきたように感じています。それが日本の3Dプリンティングをどう変えるかというと...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

「他力活用」が日本の3Dプリンティングを変える?

平年より厳しい冬の気候の中2023年が始まりましたが、ウィズコロナが定着してきていることもあり、3Dプリンティング関連でも様々な有人対面のイベントが次々に開催、または計画されています。例えば1月20日に東京大学生産技術研究所にて「第13回AMシンポジウム」、また日本金属学会「2022年度AM研究会 第2回ミーティング」が開催され、それぞれ盛況であったようです。その中でこれまでと違い「他力活用」の話題や促進の機運が日本でもようやく増えてきたように感じています。

その点について大変参考になる記事があり、ShareLab様の業界ニュースサイトで、長きにわたり国内外の3Dプリンティング産業動向調査研究をされている矢野経済研究所 ICT・金融ユニット 主任研究員 小山博子氏へのインタビューの中で小山様は、「自社だけで解決できないことは他社の力を借りて解決する海外の傾向と、それが難しい範囲が日本は広いのかもしれない」という要旨の見解を述べられています。その記事でも触れられている、3Dプリンティングによる住宅建築販売をされているセレンディクス社Sphere事業部責任者COO飯田様のネット上での発信でも「世界最先端の住宅を創るためにもっと協力者が必要。日本には凄い技術がたくさんある。進歩とは力の結集」と述べられています。

これまでも、他でも繰り返し「3Dプリンティングの進歩発展には協働が必要」と言われてきましたが、筆者は主語が逆ではないかとも思っています。つまり、「協働のきっかけや進歩発展するために、3Dプリンティング(デジタルマニュファクチャリングの要素として)が有効」ということです。そのこころは、3Dデータはものづくりに必要な様々で多くの情報を、距離や時間や言語に左右されず、正確に速く伝えて共有でき、そのデータから安近短で現物に出来る3Dプリンティングがあることで協働がしやすくなり、また3Dプリンティングで実部品製造をするにはソフトウエア、解析、材料、加工、計測、経営、教育など多種多様な知識とアイデアの結合が必要で、3Dプリンターはそのプラットフォームになりやすい、ということです。

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もちろん日本で「他力活用」の場や仕組みが増えることは3Dプリンティングだけでなく、日本の製造や医療全体にもプラスになると思うのですばらしいことですが、一方で新たな課題もあると筆者は考えています。そのひとつは「需要の発信共有」です。海外でももちろん軍需や企業の機密は重要ですが、それでも出せる範囲の具体的条件で「こういう部品やシステムの課題があり、解決方法を探している」ということを協働組織の中で発信共有したり、3Dプリンターメーカーやサービス会社に需要や課題を示した上で、「メーカーで解決してほしい」ではなく「一緒に解決しませんか?」というケースが見られるように思います。この課題発信共有がされない背景として、自社開発製品の競争力を高め、模倣されないよう、課題は自社だけで解決したい傾向に加え、「その課題は3Dプリンティングには関係ない」と決めつけてしまうこともあると思います。

もうひとつの課題は「海外力の活用」です。確かに日本には世界的にも優れた技術や企業は多くあり、「オールジャパンなら解決できる」とも聞かれますが、それでも3Dプリンティングについては海外で既に研究開発されていることも多くあり、単に装置材料メーカーだけでなく、研究者、エンジニアリングサービス企業、ユーザーの「他力」を使うことは有効だと思います。

この2つの課題の改善案は、例えば需要発信については開発改善の課題を部品単位の要件定義に分解し、それだけを発信共有することにより製品全体の機密は保ちつつ、また先入観を持たず、「無理」と思われる課題も投げかけてみることで、自前開発のスピードと成果の限界を超えられるかもしれません。もう一つの見方として、3Dプリンティングの技術研究開発を汎用目的に行うと、結果が出るまでの時間とコストがかかりますが、ある特定の需要課題に集中すれば、速く安くできるとも考えられ、より先に需要課題を発信すれば、他力のリソースも早く多く使えるかもしれません。

海外力については、海外展示会やカンファレンスに参加し情報を取ることも大事ですが、それより「こちらからも情報を出す」ことが大事で、その上で海外の協働団体や学会と継続的な連携関係を作ることが考えられます。

余談ですが、筆者はたわいもない雑談の中で「座右の銘」的なことを聞かれたときに、最近は「他力本願」と答えています。今は「他人だけをあてにする」マイナスな意味で使われ、本来は仏教用語で、全てのものを救いたい阿弥陀如来の願いの力を表す言葉とのことですが、自分は勝手に、自分の力は到底足りないので、他力にも頼って役目を果たすという意味で使っています。それが良いかはわかりませんが、日本の3Dプリンティングはこれから「他力活用」が広がれば日本独自の強みに変えて行けると思いますので、読んでいただいているみなさんにも、ぜひ「他力活用の場」に関わっていただければと思います。


TCT Japan 2023展示会のご案内

3Dプリンティングの代表的な国際展示会のひとつである「TCT Japan 2023」が下記の通り開催されます。

TCT Japan 2023
開催日時:2023年2月1日(水)~3日(金)10:00-17:00
場所: 東京ビッグサイト 東ホール・会議棟入場料:無料(完全WEB来場登録制)
詳しくは公式ホームページをご覧ください。

弊社丸紅情報システムズ株式会社は、会員である日本AM協会ブースにて出展していますので、ぜひお立ち寄りください。

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