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今年のformnextのキーワードは「コネクト」だった!掲載日:2020/11/18

毎年開催されてきたドイツでの3Dプリンティングの世界最大規模展示会formnextは新型コロナウイルス感染拡大により初めてオンライン開催になりました。そこで分かった3Dプリンティング先進地域の今とこれからを知るキーワードは「コネクト(つながる)」でした。それはどのようなことかというと...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

formnext connectがオンラインで開催されました

前回も、また昨年も含め何度もこのコラムでお伝えしてきましたが、毎年11月にドイツ フランクフルトで開催される3Dプリンティングに関する世界最大規模の展示会・カンファレンスであるformnext(フォームネクスト)は、新型コロナウイルス感染拡大により、今年は初めて「formnext connect」として11月11-12日(ドイツ現地時間)にオンラインで開催され、筆者も参加しました。主催者からの結果報告も下記の通り公開され、203の出展者、世界100以上の国から8541人が(1/3はドイツ国内、2/3はそれ以外)新しく用意された出展企業とのマッチング機能を使い、それにより4733回のオンラインミーティングが行われ、また221の講義または講演が提供されたとのことでした。

https://formnext.mesago.com/frankfurt/en/press/press-releases/formnext-press-releases/finalreport.html

もちろんこれまでの会場でのイベントよりは規模が小さく、また他のオンラインイベントと単純比較はできませんが、参加登録、出展企業のオンラインブース、メインステージやテーマ別の講演やパネルディスカッションも含め、大きなトラブルやストレスもなく(稀に声が聞こえないとか聞き取りにくいこともありましたが)日本から参加視聴できましたし、まず短期間でこのようなシステムとコンテンツを作り上げ、新しいビジネスマッチングをオンラインで成功させたことはすごいことだと思いました。

また、もちろん世界どの地域も新型コロナウイルスによる経済停滞、業績悪化、回復の見通しが立たないことに直面していますが、それでも全体を通して3Dプリンティングの装置や材料メーカーは積極的に新製品開発をし、ユーザーも活用を変わらず広げていることが分かり、これまでの延長線上に成長を続けているという感じを受けました。

また、3Dプリンティングを特に実用部品や実用治工具製造に使うための課題であるコスト、生産能力、品質と管理、仕上げ加工削減、工程自動化は広く共通認識となり、同時にすぐに画期的に解決する「魔法」はなく、教育と連携と改善を着実に進めていくことという話が多く聞かれ、また改善のための新製品、新連携の発表は多かったように思います。一方、これまで多かった自動車産業での3Dプリンティングの活用については話題が少なく、やはり航空宇宙、重工業(鉄道含む)、生産機械、医療歯科分野での話題が多く、当面この分野での活用が広がることは変わらないと見ています。

3Dプリンティングの今とこれからを知るキーワード

筆者が今回のformnextを通して分かった、特に3Dプリンティングの先進地域の今とこれからを知るキーワードがありました。

「コネクト(つながる)」

イベントタイトルがformnext connectとされたのは、「集まれないけれどオンラインでつながりましょう」ということも含まれていたと思いますが、講演やパネルディスカッション、また出展企業から発表されたニュースでも「つながる」ということが多く見られたのは今回の最大の特徴で、かつ3Dプリンティングの先進地域の方々が前述の課題解決に必要で、かつ今出来て、最も効果があることと考えていると解釈しました。

formnextに合わせて発表された例として、3Dプリンティングのための様々なデータ修正、編集、作成、解析機能を持つMaterialise社のソフトウエアの最新バージョン「Magics25」が発表されましたが、その新機能の一つとして、DesktopMetal社が発売予定のバインダージェッティング金属3Dプリンター「Shop」「Production」システムで、焼結工程で必要な「支え」となる部品(メタルインジェクションモールディングでも使われる「セッター」と呼ばれるもの)を簡単な操作で設計できる機能が発表されました。

Materialise社プレスリリース(英文)

https://investors.materialise.com/news-releases/news-release-details/materialise-introduces-build-processor-support-desktop-metal

機能紹介動画(日本語字幕)

またformnext内ではありませんでしたが、直後に公表された例では、Stratasys社はフルカラーPolyJetプリンター「J55」「J826」「J850」で工業デザイナーがCMF(色、材料、表面加飾)をコンピュータ画面だけではなく、早い段階でリアルな試作品で評価検討をよりしやすくするため、3Dモデルに色、模様、テクスチャなどを多くのライブラリから選んで追加できるレンダリングソフトウエア「Keyshot(今後リリースのバージョン)」から保存される3MFフォーマットファイルを、プリンターソフトウエアGrabcadPrintで形状、色、テクスチャーもそのままインポート、3Dプリントできる新機能を発表しました。


これはデザイナーが考えるデザインと、それを表現するKeyshotとStratasysプリンターを簡単につなげるものです。

この他にも、3Dプリンターメーカーとソフトウエアメーカーの共同開発による生産管理や工場シミュレーションのソフトウエア、また後仕上げ装置メーカーや工作機械メーカーとの競合開発によるプリントから仕上げの連結自動化システムなどの発表が多くありました。

また、ドイツとアメリカは3Dプリンティングの産業規模や活用の世界2大地域と言え、「ライバル」の立場でもありますが、両国のパネリストによるディスカッションでは、お互いの優れたところを更に組み合わせ、連携することの重要性が話されましたし、主催者からの講演では中国 上海や深圳での展示会、また10月のformnext東京フォーラムの様子も動画で紹介され、国際的な連携の話題もありました。

その他にも、新型コロナウイルスにより課題が浮き彫りになった「グローバルサプライチェーン」の弱さを補う、または変えるために3Dプリンティングが有効であるということや、企業がますます対応を求められる「サステナビリティ(環境・社会・経済の3つの観点からこの世の中を持続可能にしていくという考え方)」にも、使用原料材料が少ない、モノの輸送や在庫を減らせるという点で3Dプリンティングが有効という話や、廃棄金属から3Dプリント用金属粉末を作る装置を開発した企業の紹介もありました。

以前のコラムでも下の図を紹介しましたが、3Dプリンティングを特に実用品生産に使う場合は、考える-作る-整える-評価する工程をつなげることが必要で、それにはそれぞれのツール、人材、組織を自前でつなげるより、社内複数部署、他の企業、メーカーとユーザーなどが「つながる」ことが重要とも言えます。

景気後退やオンラインということもあり、昨年までのような多くの情報や、何より人同士のつながりは残念ながら得られませんでしたが、今回のformnextが新しい「つながり」の場として開催され、また参加できたことはとても良かったと思います。今後の海外展示会がどうなるかわかりませんが、オンラインだから日本からも参加しやすいこともありますので、ぜひ皆さんも機会があれば参加してみてください。

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