丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。
冬季の国際スポーツ大会が終わり、日本選手、特に若い世代の活躍は明るいニュースでしたが、人権問題や、ルールや採点による問題など協議の本質とは違う影の部分も浮き彫りになり、複雑な感じでした。一方、特にウインタースポーツは「道具」を使うものが多いようで、カーリングのストーンはある島の天然石からしか出来ないと同時にルール判定用電子センサーが組み込まれていて、デジタルとアナログが混在していたり、中国選手のスケートブレードが金属3Dプリンティングで出来ていたなどの情報もあり、ものづくりの面でも興味深いこともありました。
そのように金属3Dプリンティングの活用は少量、特殊な部品の製造に広がり続けていますが、期待もされ、研究開発も盛んなのは多量一般部品製造への活用で、それに関する海外のニュースをご紹介します。
アメリカ Desktop Metal社が2022年2月28日に、多量部品製造に適した金属バインダージェッティング方式の3Dプリンター「P-50」市販1号機を同じくアメリカのStanley Black & Decker社に出荷したニュースを配信しました。(注:日本国内への出荷はまだなく、今後となります。)
Stanley Black & Decker社は建築から工業まで様々なものづくりに使われる主にプロ用の工具、装置の、歴史もある世界的に有名なメーカーで、日本でもSTANLEY®ブランドとしてハンドツール、パワーツール、先端工具アクセサリーなどが販売されているようです。
この発表に合わせ、Desktop Metal社はP-50の概要紹介動画を下記の通り公開しています。
P-50はDesktop Metal社独自開発のSPJ(シングル パス ジェッティング)を採用し、金属3Dプリンティングの中でトップレベルの小部品多量生産能力があります。サポート構造が不要、比較的安価なMIM用市販粉末が使える特長もありますが、粉末クリーニング装置や脱脂焼結用電気炉と人の作業は必要です。上の動画にも一部出てきますが、同じプリントヘッドを使い、小部品生産や粉末とプリント条件研究に適した小型のP-1含め、詳細は下記をご参照ください。
https://www.marubeni-sys.com/3dprinter/desktopmetal/production.html
詳しい導入背景や実際の製造部品の情報はこれから出てくると思われますが、プロ用パワーツール、工具は作るモノにより多種多様な一方、航空宇宙や輸送機器部品のような高度な軽量化や部品形状による革新的な機能革新の需要は少ないと想像でき、一方で消耗も速く、同時に交換や修理も速さが重要で、それを世界規模で提供するためのサプライチェーンや在庫物流のコストは膨大であることは想像できますので、つまりP-50による利益は部品製造のQCDより、サプライチェーンの変革から得るのではと考えています。
部品単品の設計製造変革より、新しいサプライチェーンを作ることに3Dプリンティングを使うと投資対利益も大きくなり、金属バインダージェッティングはどちらかというとこの用途に適しています。このような利益想定と、見合う投資をする企業は、国際情勢や気候変動への対応も併せ、これが今後の金属バインダージェッティング活用の幕開けとなり、今後増える可能性が高いと考えています。
もう1社の金属バインダージェッティング導入活用事例動画が先日公開されていましたので以下に紹介します。
こちらのPGV Industries社は天然資源掘削機械のメーカーで、こちらも歴史のある会社のようですが、同じく多種多量の消耗部品を切削製造、在庫、輸送するサプライチェーン改善による利益のため、Desktop Metal社の、金属バインダージェッティングプリンターや電気炉含むパッケージシステム「Shopシステム」を導入されたそうです。
部品製造以外にも、サプライチェーンの変革を「Shopシステム」による治工具製造の改善により行い始めた海外企業Wall Colmonoy社の例を弊社ホームページに日本語で掲載しました。こちらもご参考にしてください。
https://www.marubeni-sys.com/3dprinter/desktopmetal/case/wall-colmonoy/
話題変わって、最近おもしろい海外での3Dプリンティング活用事例がありましたのでご紹介します。ドイツのデザイナーであり建築家でもあるStephan Henrich氏がデザイン設計し、樹脂粉末積層床溶融接合法(PBF)で作られた靴、「Cryptide Sneaker」を動画で紹介されています。
Cryptidとは、例えばネッシーのような、いるかもしれないしいないかもしれない生物のことで、そこから発想を得たとのことです。ただ動画でもなんとなく歩きづらそうに見えたり、日本人の筆者には地下足袋にしか見えてこないのは気のせいかもしれませんが、一度履いてみたいいと思わせるデザインです。
これも確かに個人の足にぴったり合わせる、通気性を良くする、履き心地やクッションという様々な機能を1種の材料から形状により発出させるという、デジタル解析設計と3Dプリンティングの利点を示していますが、もう一方ではこれまでの靴製造の複雑なサプライチェーンを変えるため、廃棄や輸送が少ないサステナブルな形状と作り方だと思います。こちらもご参考まで。
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