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春の海外イベントに見る3Dプリンティングの変化は?掲載日:2023/05/10

ようやく過ごし方がコロナ禍前に戻った5月大型連休も終わりましたが、その間海外では毎年恒例のイベントもコロナ禍前と同じ、もしくはそれ以上の規模で開催され、3Dプリンティングに関わる多くの情報が連休中にも発信されました。それらから見る3Dプリンティングの変化はどのようなことかというと…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

欧州イベントでの「織物生地+3Dプリンティング」が起こす変化

日本ではようやく過ごし方がコロナ禍前に戻った5月大型連休も終わりました。大雨や地震などに見舞われた地域もあり、全てが元通りとはならなかったと思いますが、筆者は久しぶりに家族で近場日帰り旅行が出来たり、野球を見たり、屋外でマスク無しで多くの時間を過ごすことが出来て、おかげで早々に日焼けしてしまいました。自宅近所は緑が多いこともあるかもしれませんが、新緑か花か、何とも言えないこの時期らしい香りを感じたのも、マスク無しで長い時間外にいたのが久しぶりだったからかもしれません。みなさんも仕事、休暇それぞれ「久しぶり」の過ごし方をされた方も多いかと思います。

その様な連休前、中に海外では毎年恒例で開催されるイベントが、ようやくコロナ禍前と同じ、もしくはそれ以上の規模と来場者で開催され、3Dプリンティングに関わる多くの情報が連休中にも発信されました。その中で注目したトピックスをご紹介します。

イタリア ミラノで4月18~23日に開催されたMilan design week 2023は、約2,500社が出展したそうですが、その関連記事に下記がありました(英語のみ)。 https://www.voxelmatters.com/maserati-granturismo-stuns-with-3d-printed-interiors-at-milan-design-week

イタリアの自動車メーカーMaserati社がGranTurismoの新型限定市販車と3つの特別仕様車を発表したとのことで、そのうちの1台GranTurismo One Off Ouroborosは日本人デザイナーの藤原ヒロシ氏とのコラボレーションとのことで驚きましたが、もう1台のGran Turismo One Off Luceのシートはナイロン繊維再生ECONYL ナイロン生地にStratasys J850™ TechStyle™によるロゴが 3D 印刷されていたとのことです。J850™ TechStyle™についてはこちらのコラムでもご紹介したことがありますが、既存のPolyJetフルカラープリンターで、織布などに直接透明、不透明、硬質、軟質を掛け合わせたフルカラーの立体物をプリントできるようにしたモデルです。
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下の写真は最近ストラタシス社の方から見せていただいたサンプルですが、2D画像の色や濃淡から自動的に3Dプリント用立体データを作り、フルカラープリントされたそうです。
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アパレル、シューズの海外ブランドメーカーやデザイナーが次々にこのプリンターを使った作品や実売商品を作る例が急に増えていましたが、他の欧州自動車メーカーもコンセプトカーの内装装飾にこの技術を使っていて、今後日本含めた他の地域でも使われ始めることが予想され、特にプラスチック3Dプリンターの実用品への良い活用がなかなか見つからない、広がらないと聞かれる中、「織物生地+3Dプリンティング」という新しい使い方は、「変化球」ではありますが予想より早く広がるのではと思います。

北米イベントでの多くの新装置・材料が起こす変化

こちらも毎年恒例の北米最大3Dプリンティング専門展示会「RAPID + TCT 2023」がアメリカ シカゴで5月2~4日に開催されました。今回のスローガンは「THE NEXT LEVEL」で、おそらく3Dプリンティングの産業、技術、活用についてもう一段上を目指す意味と、コロナ禍前に戻すのではなく、次のレベルに進もうという意味が含まれるのではと勝手に推察しています。筆者は会場に行けませんでしたが、こちらも海外のネットニュースが毎日多く配信され、追いかけるのも大変でした。

それらの記事の中に、北米の3Dプリンティングの変化がうかがえるいくつかの内容がありました。

・3Dプリンティング業界は、工業化、サステナビリティ、そして最近では CHIPS 法(アメリカ国内半導体産業支援)などの法律に代表される産業の国内回帰が議論の主題で、3Dプリンティング新装置・材料がそれらとどう結びつくかに関心がある。

・Divergent Technology社創設者兼最高経営責任者 ケビン・ジンガー氏(過去にこちらのコラムでも紹介)が基調講演され、同社の焦点はAM を生産に適用することで、金属AMとソフトウエアの組み合わせによるDivergent Adaptive Production System (DAPS) のこれまでの成果と今後について、支援者から多額の投資を受け規模拡大を検討していること、欧州に2つの施設を開設し、世界的なネットワークを構築する計画があると同時に、同社はテクノロジーそのものではなく「ソリューション」に焦点を当てており、自動車メーカーに製造サービスを提供する最初の本格的な施設が2027 年に完成予定であることを話された。同社が注目されるのは、DAPS システムは「真のデジタル製造」の一例で、その価値は自動車であれ防衛であれ、サプライチェーンの短縮とリスクの軽減、そして機能統合を含むより高性能な製品にあるとのこと。

・公表された新技術、新製品の傾向として、例えばこれまでのAM用設計のボトルネックを解決するために、ソフトウエアの機能やデータ入出力が他のソフトウエアやプリンターと直接接続される例が多く見られた。また、材料吐出法の造形時間が長い課題に対し、機械的ではなく、センサーと振動補正ソフトウエアにより高速化する技術が発表された。

・有識者によるパネルディスカッションでは、Impossible Objects 社Jeff DeGrange 氏はAM業界の成長は「アプリケーション主導」であると述べ、加えて成長を促進する上でエレクトロニクス産業の重要性を指摘され、製造国内回帰を背景に、AM導入活用により市場投入までの時間を短縮したいという「大きな願望」を生み出していると述べた。

上記はほんの一部に過ぎませんが、北米ではコロナ禍前後で3Dプリンティングを活用する背景や理由が、モノの革新から、サステナビリティや製造産業国内回帰の課題解決へ、また活用が進む産業が防衛航空宇宙から自動車やエレクトロニクスに移っていく変化が起きているようです。その変化を反映してか、プリンター新製品も「数倍の高速化」を謳ったものが目立ち、一方で高速化、高品質化を「次のレベル」にする課題に対し、ハードウエアだけでなくデジタル技術により早く大幅に改善する傾向があると感じました。また金属主流の欧州と、樹脂や炭素繊維複合材も活発な北米との違いも見られますし、もちろんよく言われてきた「日本との違い」も変化しており、「海の向こうで起きていること」とせず、日本にも影響がある仮定を持って状況を見ておくことがますます重要になってきているのではないでしょうか。

先日新聞でアメリカの国際政治有識者の方が、「グローバル化を突き動かすのは、距離の持つ重要性を縮小させる技術革新だ。それはこれからも変わらないし、グローバル化は終わっていない。ただ、もはや我々が欲するものではないかもしれない。」と書かれていました。3Dプリンティングはその「技術革新」のひとつと考えますが、北米での新たなグローバル化に向けた3Dプリンティングの変化と上記の見方はつながっているのではと思って読んでいました。

国内展示会とオンラインイベントのお知らせ

弊社丸紅情報システムズは、関西メタルジャパン(高機能金属展) に出展します。筆者も会期中ブースにいる予定です。

開催日時:2023年5月17日(水)~19日(金) 10:00~17:00
会場  :インテックス大阪 6号館 (大阪市住之江区南港北1-5-102) ブース番号:18-36

丸紅情報システムズからの無料招待券はこちらからです。e招待券(電子版招待券)を印刷してご使用ください。入場時にお名刺1枚が必要です。
https://www.material-expo.jp/osaka/ja-jp/search-ex/2023/metal/directory/details.org-432a6547-c92d-4b86-924b-bb1ebe4594c2.html#/
(外部サイトが開きます)

次に、3月にこちらのコラムでもご紹介しましたが、3Dプリンティングに関わる方々の交流オンラインイベント「JAMM(Japan Additive Manufacturing Meet-up)」の13回目が5月26日(金)に下記の通り開催されます。筆者も企画から参加していますが、今回は「サステナビリティ」に関する講演とディスカッションが行われる予定です。全体の時間は長いですが、入退場は自由ですし、聞きたい部分だけの参加でも結構です。ぜひみなさんのご参加をお待ちしています。

イベント詳細:https://sharelab.jp/event/jamm-13-230526
参加申込フォーム:https://news.sharelab.jp/jamm-230526/

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