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NTTデータ三洋システム 導入事例

ノーテルネットワークス社のOME 6500は、eDCOというノーテル独自技術によって長距離の伝送区間においても分散補償モジュールを利用せずにネットワークの構築を可能にします。このため、従来であれば分散補償モジュールの設置、試用、運用が必要であった長距離間のバックボーンの増強を、はるかに簡素な手間、期間、費用で実現します。

■ 松元 雅彦氏
1991年4月入社。組込みソフト開発部門で開発を2年経験後、現在のネットワーク部門へ異動しSANNETのプロバイダ事業立ち上げ以前からインターネット関連の技術者として現在に至る。

■ 笹川 憲邦氏
1993年4月入社。LAN構築部門、組込みソフト開発部門を経て現在のネットワークサービス部門に。趣味は水泳・水球。自称歌って泳げるプログラマ。

■ 田谷 茂氏
1994年4月入社。ソフトウェア開発部門を経て、1996年より現部署のSANNET事業部に。
サーバ・ネットワークなどのSANNETのインフラ構築・整備に携わる。趣味は音楽鑑賞・読書。

「華」はいつの世も一握りの人のためにある。しかし、広く目を向けると、あまたの輝きがあることに気づかされる。 我々がごく当たり前に使っているインターネット。 その裏にも、実は、数多くの人々が躍動し、我々の生活を支えている。 世間の目に決してふれることはない。でも世の中になくてはならない不可欠な「知られざる者たち」──。 IT業界に凛と咲く一輪の花を、見つめてみた。

絶対的な使命、「通信の維持」

今や、21世紀初頭の日常風景である。
パソコンの電源を入れ、ホームページを閲覧しメールを送る。日本では7,000万人以上、世界では約7億人もの人が、日々そうした行為を繰り返している。
「そのインターネットを支えること、それが我々の仕事です」松元雅彦氏。
プロバイダとして有名な『SANNET』の技術グループマネージャーである。
SANNETを運営しているのは株式会社NTTデータ三洋システム。大阪に本社を構える同社は、もともと三洋電機のシステム部門として発足。2003年に株式会社NTTデータが出資、NTTデータと三洋電機の出資比率がそれぞれ50%となり、現在の『NTTデータ三洋システム』という社名になった。そのISP(インターネット・サービス・プロバイダ)事業をおこなっているのが同社の『SANNET事業部』である。
SANNETには、もともと広域イーサネット・ネットワークを活かしたバックボーンが存在していた。しかしユーザの増加にともなうトラフィックの増大により、2年前にバックボーンを光ファイバ網に切り変え、東京-大阪間に1ギガビット/秒(1Gbps)※1の線を2芯使用し、伝送装置などを自社で設置することで高速で安定したサービス提供を支えていた。
個人間の情報のやりとりだけでなく、企業間の連絡、商取引など、私たちの生活にとってなくてはならないインターネット。
「プロバイダにとってもっとも肝心なことは『通信の維持』です。それが切れることは、ある意味、電気やガスなどのライフラインが止まるのと同じような混乱を招く可能性があります。ですから、切れないネットワーク──『通信の維持』は、プロバイダにとって絶対的な使命です」
では、どのようにして「通信の維持」を図っているのだろうか。
「当社ではサービス回線を冗長利用していますが、実はこの『冗長』が大きなポイントです。1回線しかないと、仮にその回線にトラブルが生じるとすぐに通信断になってしまう。それが2回線あることで、1つの回線に障害が生じても片方の回線にデータを寄せることができる。そうすることで『通信の維持』が可能になるわけです」
だが、こうした状況もそう長くは続かない。
さらなるトラフィックの増大が起こってきたのである。

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今まで聞いたことのない技術、『eDCO』

「ADSLや光回線などのブロードバンドユーザの増加によって、ピーク時に2つの回線に流れるデータ量の合計が、1Gbpsを超えるようになりました。つまり片方の回線が使えなくなった場合、残りの1回線ではもはや通信を維持することができなくなるリスクが高いということです。そこで新たな対策が必要になりました」
方法は2つあった。1つは回線を物理的にさらに増やすこと。もう1つが回線帯域を一気に10Gbpsに増強することだ。1Gbpsの回線をさらに増やす前者の方法では、回線数が多くなることでネットワーク管理が複雑になるといったデメリットがあったため、既存回線を10Gbpsにするのが現実的な選択肢となった。
「実は2年前にバックボーンを光ファイバにしたときから、回線の10Gbps化は念頭にありました。そのときに考えていたのは、DWDM※2の技術でした」
通常、1つの光ファイバには1つの波長を流すが、1回線に複数の波長を一度に流すことができる技術、それがWDMだ。「ブロードバンド」のトレンドと共に急成長した光伝送技術のひとつである。DWDMというハイスペックのWDMを選ぶことによりデータ量を大幅に増やすことができる。
その方向でコストの試算をし10Gへの準備が整いつつあった。その矢先、松元氏は「これまでどの文献で調べても見たことも聞いたこともなかった」新しい技術と出会うことになる。
「東京-大阪間の約650kmもの長距離にDWDMでネットワークを構築する場合、約80kmおきに分散補償器という機器を入れる必要があります。ところが前回DWDMを導入した営業マンから新たに紹介されたその技術を使うと、途中に分散補償器の設置が一切必要なく10Gbpsが実現できる、というのです」
夢のようなその技術の名は『eDCO(Electronic Dynamically Compensating Optics)』。カナダのノーテル社による独自技術で、2,000km以上の光伝送区間でも分散補償器を一切必要とせずに帯域アップが図れるというものだ。
今回、松元氏とともにプロジェクトチームに加わった笹川氏が解説してくれた。
「通常、光伝送中には、距離が延びると波長の歪みが生じてしまいます。そこで必要となるのが歪みを補償する分散補償器です。しかしeDCOは、特殊な変調技術を使い、光伝送する際にあらかじめ計算して歪みを機械的に与え、それが最後に届く際に波形が元通りになるようにするのです」
この技術は現在、世界でただ1社、ノーテル社にしかできない。
「eDCOを導入した場合の試算は、当初DWDMで想定した構築費の約半分でした。さらに分散補償器を必要としないため、工期も3分の1~4分の1に短縮できると予想されました」
そして、もう一つ大きな決定要因となったのがリスクの少なさである。
「80kmごとに分散補償器を入れるということは、工事中にその都度回線を切らないといけないということです。それは、工事の度に回線が1つになってしまうことを意味します。もしそのときにトラブルが生じた場合、通信がストップしてしまう可能性があります。それはあまりにリスクが大きすぎる。また、分散補償器を数多く設けるほど、ハードウェア故障や人為ミスなどを原因としたトラブルが発生する確率も高くなります。追加導入する機会が少なければそれだけリスクを回避できると考えました」

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「何気ない日常」を支える

2006年春、東阪間で10Gbps実現のためにeDCOが導入される。実質的な工事期間はわずかに3週間だった。
前例のない日本ではSANNETがeDCOを商用バックボーンネットワークに導入した最初のケースである。
10Gbpsの実現。これにより、SANNET事業部はどう変わったのか。
「これまで当社は個人ユーザがほとんどでしたが、これからは企業ユーザの拡大が期待できます。というのも、今回、ルータをMPLS※3VPN※4が使えるものに替えたことから、イーサVPNやIP-VPNといった企業向け通信サービスメニューを拡充できることになりました。企業は個人ユーザ以上に通信の停止が許されないため、10Gbpsの完全に冗長化したバックボーンは非常に大きな優位性をもつはずです。また、東阪間に10Gbpsの専用線を新たに提供することもeDCOの装置にパッケージを追加することで可能です。これにより、データセンターのようなところに貸し出すこともできるようになります」
また、SANNET事業部では、これまでもいくつかの中小プロバイダに対してOEM※5で回線を貸し出していたが、10Gbpsになり通信の安定性が高まったことで、さらに多くの中小プロバイダへの貸し出しが進みそうな気配だ。
「事業の幅が広がったこともそうですが、やはりプロバイダとしてはトラフィックの増加に対して有効な対応策を講じることができたことが最大のメリットですね。これからますますトラフィックは増えていくと思いますが、10Gbpsあれば仮に1回線が落ちたとしても、残りの1回線で余裕をもって対処できる。プロバイダ事業に携わる者にとって、この安心感は何物にも変えられません」
大阪・守口市にある株式会社NTTデータ三洋システム本社。ここに東阪間ネットワーク全体の通信状況を監視するためのセンターがある。ここにはエンジニアが常駐し、24時間365日監視を続けている。
「クライアントの評判は?」の問いに対し、松元氏はこう答えた。
「我々の仕事が注目されるときというのはトラブルがあったときなのです。つまり、注目されてしまうのはまずい状況なのです。我々の存在を意識させることなく、ごくふつうにインターネットを利用してもらう。それが理想の状況です」
人は「空気」を意識することはない。にもかかわらず、それは我々にとってなくてならないものである。
今日もパソコンの電源を入れ、何気なくホームページを見て、メールを送る。
我々の「何気ない日常」を、「知られざる者たち」が支えている。

※1 Gbps(Giga bit per secondギガビット/秒)
通信速度の単位の一つで、1秒間に何十億ビットのデータを送れるかをあらわす値。1Gbpsは、約10億bps(=1000Mbps)で、1秒間に約10億(=10の9乗)ビットのデータを送れることを表す。

※2 DWDM
(Dense Wavelength Division Multiplexing高密度波長分割多重方式)
光ファイバを使った通信技術の一つ。波長の違う複数の光信号を同時に利用することで、光ファイバを多重利用する方式。同様の技術であるWDMをより高密度化したもの。波長の異なる光ビームは互いに干渉しないという性質を利用している。この技術により、光ファイバ上の情報伝送量を飛躍的に増大させることができる。

※3 MPLS(Multi Protocol Label Switching) 
パケットの高速転送を可能にする。ラベルスイッチング方式を用いたパケット伝送技術。

※4 VPN(Virtual Private Network)
公衆回線を専用回線であるかのように利用でき、安全な通信を可能にするセキュリティ技術。仮想専用線。

※5 OEM(Original Equipment Manufacturer)
相手先ブランドで販売される製品を製造すること。また、製造するメーカー。


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