丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。
年明けから仕事も私用も忙しかったこともありますが、早いものでもう1月も終わりに近づいていて、今年もボーっとしてあっという間に1年終わってしまわないようにと早くも思っています。
さて、最近特にテレビやマスメディアで5G(第5世代移動通信システム)の話題が多いなと感じていますが、春に日本でのサービスが始まるとのことで、何が出来る、何が変わるかが盛んに伝えられています。身近にはスマートフォンなどの動画ダウンロードが早くなるなどのメリットがあるようですが、先日のアメリカでのCESでもスマートシティや電気自動車、自動運転などの展示が多くあったようで、もっと大きな変化も起こりそうです。その中でも特に「移動通信」ということもありモビリティ(ここでは移動手段、乗り物全般)が変わるとのことですが、それに関わるモノやものづくりも変わることがあり得ますし、寧ろ必要なのかもしれません。もしくは、リアルな仮想現実や遠隔医療や物流改革などでヒトが移動しなくなると「乗り物」が要らなくなるのかもしれませんが、それでも自由に自分で移動する楽しさや直接見たり会ったりする価値はなくならないと思いますので、形は変われどもモビリティがなくなることは無いと思って(どちらかと言えば願って)います。
ドイツ展示会formnextについて、先日このコラムでこちらとこちらでお伝えした中でも自動車、航空機、自転車、ドローンなどモビリティに使われる実用部品が3DプリンティングによるDDM化で直接生産される事例が多く見られた一方、活用範囲は現在の3DプリンティングのQCDで出来る極々狭い範囲に限られているのも事実です。
そこで日本での最新動向を探るべく、半日だけでしたが下記の展示会を見に行きました。
第13回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展
https://www.automotiveworld.jp/ja-jp.html
2021年1月20日(水)~22日(金)東京ビッグサイト
(主催リード エグジビション ジャパン 株式会社)
その中で参考になった展示例を以下にいくつか紹介します。
株式会社アビスト様(https://www.abist.co.jp/index.html)は幅広い製造関連の工業設計技術サービス事業(請負、技術者派遣)、樹脂・金属の3Dプリントサービス事業を行われており、今回も大きなブースで出展をされていました。
その中で、formnextでもドイツFIT社がDDM部品の実例展示をしていたトヨタ「LQ」の実用部品を受託生産された事例を展示されていました(写真は許可を得て撮影しました)。
説明パネル
部品サンプル
LQは5Gを活用した自動運転を含むコンセプトカーですが、公道を走る前提で少量生産されるので、部品は規格や法律への適応を求められるそうです。
実際持ってみると見た目より軽く感じましたが、基本構造として閉断面の薄肉筒形状になっているので、剛性、強度が高いと共にコンピューターによるトポロジー最適化により、強度に貢献していない部位には異形孔を空けることで軽量化とコスト低減を実現されています。このように、3Dプリンターと材料の特性を知り、特長を活かし欠点を補う設計、すなわちDfAM(Design for Additive Manufacturing)を使われた良い事例だと思います。
もうひとつご紹介する事例は、八十島プロシード株式会社様(https://www.yasojima.co.jp/)のブースで展示されていた、路面電車バンパーのスペアパーツです。
これは以前このコラムでも下記の動画でご紹介したStratasys F900とULTEM9085材料により実際に運行される路面電車のスペアパーツや運転席特殊部品のDDM化をされたSiemens Mobility社の事例で紹介されているバンパーの塗装前、組み立て前部品です。
元は技能者の工数や型を必要とするガラス繊維FRPと塗装で一体で作られていましたが、スペアパーツを長期に保管すると変形してしまうこと、壊れたときにすぐに作れないこと、また良くぶつかる端が壊れても全体を交換しなければならないことを解決するため、3Dプリンターで3分割にして造形、ボルトナットで組み付け、また1部だけ交換できるようにしたものです。
部品の全体は薄肉シェル形状ですが、背面を見ると剛性のためにリブ形状を設計しています。またボルトナット締結面は凹凸はめあい形状にすることで、位置決めのしやすさ、締結部の剛性アップなどを考慮したとみられる形状になっています。こちらもDDMを前提とした最適設計、DfAMの良い事例だと思います。
このように、自動車実用部品のDDMは日本ではまだまだ事例が少ないです。背景として自動車部品は当然ながら「安全」が最優先されますが、設計製造評価するための工業規格、データベースが整備されていないこと、同時に従来の部品のコストレベルが航空機部品などと比べてもかなり低いので、コスト対効果が見合う部品が少ないことなどが考えられます。
一方、昨日のid.arts様が記事掲載されていましたが、イタリアの会社が多くの3Dプリント部品により量産する小型電気自動車をクラウドファンディングで早期購入者募集を始めたそうです。
https://idarts.co.jp/3dp/xev-yoyo-3d-printed-electric-car/
このようなプロジェクトは欧米アジア各地でいくつもあるようで、もちろん安全認証や法規も違うので日本ではすぐに普及しないと思われますが、モビリティは四輪自動車だけではなく、車いすなども含め、DDMで実用部品が作られるケースは増えていくと思います。
モビリティの電動化、コンピューターやセンサーによるIoT化により部品に求められることが大きく変わると、3Dプリンティングが最も有効な製造工法になる部品が増えてくることもあり得ますので、引き続き最新動向には注目していきたいと思います。
さて先回のコラムでもご紹介しましたが、下記展示会が開催されます。
TCT Japan 2020 -3Dプリンティング/AM技術の総合展
主催 | 株式会社JTBコミュニケーションデザイン Rapid News Publications Ltd. |
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会期 | 2020年1月29日(水)- 31日(金) 10:00-17:00 |
会場 | 東京ビッグサイト 南3,4ホール |
弊社 丸紅情報システムズ株式会社も出展します。
小間番号 : 4S-M16
先回ご案内したアームロボットも実演展示予定です。
その他Stratasys、Makerbot Method、DesktopMetal Studioの3Dプリンターやサンプルも展示予定です。
筆者は都合により最終日のみブースにいる予定ですが、多くの皆様のご来場をお待ちしています!
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