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大阪大学医学部附属病院 導入事例

ekahau大阪大学医学部附属病院

緒方洪庵が開いた適塾をその源流とする阪大医学部
信念を持ち、新しい技術にチャレンジする精神は今も息づく日本を代表する医療機関の1つ、阪大医学部附属病院で、一人の麻酔科医と先端ITが、手術室という医療の最前線に、革新をもたらそうとしている
手術現場の経験から、移動する医療機器に電子タグをつけて
位置情報を把握する技術に着目
手術の効率化や医療機器台数の適正化をめざす
医療現場におけるIT活用の最前線を追った


Ekahau 位置情報システムについて

Ekahau 位置情報システムは、屋外を前提としたGPSや情報基地局(PHS)に比べて位置検知誤差が小さく、屋内で利用できるのが特長です。アクセスポイントの電波強度を検出・測位して、無線LAN機能搭載パソコン、携帯情報端末(PDA)、専用タグの位置情報をグラフィカルに表示。データ通信や音声通信等のインフラとしての無線LANとの共存が可能です。医療、製造業、流通業、小売業等、様々な産業分野において、機器の最適化、動線の把握、業務の効率化、安全性確保といった経営課題の解決に貢献します。

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大阪大学医学部附属病院

医療のIT化に積極的に取り組む阪大病院

大阪万博の跡地に広がる万博記念公園を臨む緑豊かな地に、日本を代表する医療機関の1つ、大阪大学医学部附属病院(以下、阪大病院)がある。2004年の国立大学法人化後、厳しい医療情勢のもとで運営の効率化を図りながら、地域の中核病院として、また日本有数の高度先進医療に対応した病院として医療の発展に貢献している。
大阪大学医学部のルーツは、江戸時代後期、天然痘予防のための種痘を広めた蘭学者の緒方洪庵が、大阪に開いた適塾を直接の源流とする。阪大病院には、患者第一を貫く姿勢、信念をもって新しいことにチャレンジする洪庵の精神がいまも息づいている。
阪大病院は医療のIT化にもいち早く取り組んできた。阪大医学部を卒業し、現在、阪大病院の麻酔科に所属する高階雅紀医師は次のように話す。「私が卒業した1985年当時、先達たちは、手術中の患者さんの生体情報を蓄積し解析するという試みなど、先端ITをいちはやく取り組んでいました。医療におけるさまざまな可能性を拓くことは、国立である阪大病院の重要な役割の1つです」


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業務の効率化、医療機器台数の適正化への新たな取り組み

業務の効率化、医療機器台数の適正化への新たな取り組み

阪大病院の外来患者数は年間約60万人で1日平均約2,500人。手術件数は、驚いたことに年間約8,500件、1日平均30数件にも及ぶ。高階医師は麻酔科の医師であり、同時に手術部の副部長でもある。「阪大病院の麻酔科に約20年、手術部を兼任して17年になります」と語る。麻酔科医は、手術の現場で麻酔を施すことはもちろん、モニターや患者を常にチェックし患者の生命活動を管理している。異変が起きれば輸血や薬剤投与などで対応する、生命維持のための専門職だ。幅広い医療知識をもつことから、高階医師のように、手術の運営を任されることも多い。
手術のオーダー情報は、外科から手術部に日々届く。手術室の割り振り、麻酔科医や看護師の配置を決定、機材と薬剤のオーダーを各部門にまわす。年間約8,500件の手術をいかに円滑に、効率的に運営するかが手術部の使命である。
阪大病院の手術室は全部で17室あり、様々な医療機器が廊下を行き交っている。それらを目の前に高階医師は言う。「手術に使用する一部の医療機器は、必ずしも各手術室に1台ずつあるわけではありません。様々な手術に対応するために品目数は多く、スペースと費用が問題です。そのため、専用の台車などに搭載して、手術の際に移動させる必要があります。使った人が所定の位置に戻しておけばいいのですが、なにしろ一日30件以上の手術をこなす日もあるし、救急も来ます。必要なときに、探してもなかなか見つからないということがしばしばありました」


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無線LANという汎用的なインフラを利用できる点がポイント

無線LANという汎用的なインフラを利用できる点がポイント

高階医師が位置情報システムを初めて見たのはアメリカの医療機器関係の学会である。しかしそのシステムには、「設置が大変そうだ」という印象を抱く。その数ヶ月後、ドイツの医療関係のメッセで無線LANを利用したエカハウ(Ekahau)社の位置情報システムと出会った。2006年11月のことだ。「私が位置情報システムに興味を持ったのは、手術室で使う可動式の医療機器に取り付けて、それがどこにあるかを簡単に把握できたら便利だろうと思ったからです。エカハウは無線LANという汎用的なインフラで利用できる点がまず魅力でした。当院内も無線LAN環境が整備されつつありますからね」
一般的な無線LANのAP(アクセスポイント)から送られてくる電波の強度を測定する専用タグを医療機器に取り付ける。タグの測定した情報はAPを経由し、臨床工学技士や麻酔科医の控え室にあるエカハウのソフトウェアに集められる。ソフトウェアが電波強度情報を解析し、各医療機器の位置がパソコン画面のフロアマップ上に視覚的に表示される。「当初、位置情報システムがどの程度、医療の現場で役に立つのか。実験的な側面もありました。必要最小限の投資ですぐに導入できることも決め手の1つになりましたね」
無線LANを利用して位置情報を取得する手法は、電波到達時間を測定する方式と、電波強度を測定する方式がある。エカハウは後者を採用している。電波強度方式は、壁や机などの障害物があっても精度を損なわずに位置情報を検出できるのが特長。エカハウは、壁の多い手術室エリアでの利用に適していた。手術室の中にはAPを設置できないため、廊下に設置し、手術室の厚い壁を通って手術室の奥まで電波を飛ばす工夫も施されている。
2007年4月の本格導入後、約1年が経過し、現在、麻酔器、輸液ポンプ類、神経刺激装置、内視鏡手術の映像装置、ペースメーカーなど65台の医療機器にタグが取り付けられている。当初、タグを取り付ける医療機器の選定は高階医師が行っていたが、現在では臨床工学技士や麻酔科医が自分たちで必要な医療機器にタグを取り付けている。導入効果がまず顕著に表れたのは、手術のための医療機器を準備する煩雑な業務の効率化だった。


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医療機器を探すムダな手間が解消

医療機器を探すムダな手間が解消

医療機器の保守・点検を行う臨床工学技士の控え室で位置情報システムのパソコン画面を見せてもらった。高階医師は臨床工学技士が所属するMEサービス部の責任者も兼務している。
目の前で、アイコン表示されている医療機器の1つが移動を始めた。手術が終わったのだろうか。手術は早く終わる場合もあれば、その逆もある。従来、各手術室を移動する医療機器を探す手間が大変だった。それがいまはパソコン画面を見るだけで一目瞭然だ。ペースメーカーのようにハンディで持ち運びができるものはどこかの棚に置いてしまうと見つけにくいものだ。「忙しさに紛れて置き忘れてしまうこともあります。ある医療機器を探していてエカハウの画面では位置が示されているのになかなか見つからない。結局、死角に置かれていたのですが、エカハウがなかったら探し出せなかったでしょう」
現代の医療は医療機器の存在なくしては語れない。医療機器は患者の生命に直結しており、その管理においては小さなミスも許されない。「ムダな時間が省けるので、麻酔科医や臨床工学技士も余裕をもって機器の点検や準備が行え、他の業務に取り組むための時間も創出できます」と、高階医師の口調も明るい。


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稼働率の把握が今後の課題

稼働率の把握が今後の課題

無線LANを活用した医療機器の位置情報システム導入の狙いはどこにあるのか。「まず医療機器の管理業務が効率化できます。また、医療機器の運用台数を適正化するためのデータを集めたいということも目標としています。医療機器の高額化にも関わらず運用台数の適正化は意外なほど進んでいません」
今後は医療機器の稼動状況の情報収集が課題になるだろう。「位置情報システムにはログが残りますから、何時何分にどこの場所に医療機器があったか、遡ることができます。こうした過去の移動データと、何番の手術室で何時何分にどのような手術が行われていたかといった情報を組合わせて解析すると、医療機器の必要台数を導き出すことができるはずです」
実は、医療機器台数の適正化のための基礎データとしては、位置情報だけでは不十分だ。「位置情報だけでなく稼働率の把握が必要です。医療機器がそこにあるというだけでなく、いま動いているといった情報です。稼働状態を発信するタグが内蔵されている輸液ポンプも登場しています」
ところで、麻酔科医である高階医師が、なぜITにこれほど高い関心を抱くのだろう。「私は機械好きの少年でしたから」と、照れながら話す。そして真面目な顔でこう続けた。
「阪大病院は手術に関する医療機器分野でも注目される立場にあります。医療に役立つ新しい技術があれば率先して取り組んでみて、優れたものであればいろいろな場で発言しその技術を広め、逆に誤った情報は訂正する。情報発信も阪大病院に勤める者の使命の1つだと考えています」
若い研修医は医療機器のありかを真っ先に聞きに来るという。「私が何でも知っていると思っているみたいで。そういうときにはエカハウの画面を見せて、ここに行ってみなさいと。ありましたと驚いた顔で戻ってきますよ」と、高階医師は楽しそうに笑った。


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