プレス成形における量産品の成形性ばらつき評価と要因分析

背景と目的

自動車の軽量化と安全性の両立を目的として、近年では高張力鋼板やアルミなどのプレス成形の難しい材料の使用比率が上昇しています。それに伴い、ワレ・しわ・スプリングバック・面ひずみなどの品質問題が注目されており、これまでは寸法精度の保証さえされていればよかったものが、ワレなどの成形性まで保証するニーズが高まりつつあります。

特にボデー外板に用いられるアルミのような難成形材料の成形においては、しばしば量産工程においても抜き取り検査により成形性評価が実施され、時系列変化やばらつきの確認が行われます。 本事例では、量産工程における成形性評価により量産品の成形性のばらつきを評価し、その結果判明したばらつき不具合の要因を特定した事例をご紹介します。

計測結果例

  • 使用システム :ARGUS
  • 計測対象 :アルミプレス部品

図1では、上段に左から、量産試作段階で問題なく成形された時、および量産時に抜き取りで時系列上、それぞれARGUSを用いて計測を行った最大主ひずみ分布の結果を示しています。さらに下段には量産試作時を正として、これに対する量産時の各ステップとの差分を示した分布を示しています。


図1:ひずみ分布の差分比較による量産品のばらつき評価

ARGUSでは対象の全領域を、3次元形状や板厚だけでなく、ひずみや成形限界に対する余裕度も3Dデータ上に可視化することが可能です。
さらに計測結果同士の成形余裕度の差分も全領域のカラーマップで表示することが可能です。これにより量産工程における成形性の時系列上の変化点をモニタリングすることができ、不具合の発生の有無確認や工程能力判断による不具合予測に貢献します。

今回の結果を見ると、部品の下部のエッジ近傍のR部にばらつきが大きいことが分かりました。

次にその要因分析として、各工程のFLD(成形限界線図)上での成形余裕量を分析しました。
図2にその結果が示されています。図の右側はトリム後の成形余裕量の分布とFLDによる成形性の分析結果であり、トリム後では全領域ワレ危険部位は存在しないことが分かります。

一方図の左側に示したトリム前のドロー工程の結果を見ると、部品下部のフランジ部近傍のR部に赤く表示されているワレ危険部位があることが分かります。この部位はトリム時に除去される部位であったため、この危険部位については見過ごされていました。しかしながらARGUSによる測定を用いた成形性の分析により、この部位のネッキングによりばらつきが大きくなったことに起因して、量産時のばらつきに繋がったことが判明しました。

結果として、ドロー工程のクランプ圧を調整し流入を緩和することによりこの危険部位に対策を施すことで、量産品のばらつきの解消につなげることができました。


図2:ドロー工程後とトリム後のFLDによる成形性評価による不具合要因分析

さらにこの危険部位の成形性は平面ひずみ状態であるため、板厚減少はあまり大きくない部位です。従って板厚だけ測っていては決して分からなかった不具合要因と言えます。

板厚だけでなくFLDすなわち成形性に関しても製品の全領域を計測し可視化できるARGUSだからこそ、もたらすことができた不具合要因と対策であった計測事例です。

従来法に対するARGUSのメリット

板厚測定と成形性の評価のための測定には従来それぞれ、超音波板厚測定器またはノギスと、スクライブドサークル法が広く用いられていました。しかしながらこれらには以下の問題があります。

    [ 板厚測定+スクライブドサークル ]
  • 膨大な計測工数 :測定点数を絞って1週間/1部品(ドアインナー)
  • 全周測定不可 :不具合危険部位の取り漏らし
  • それぞれ別の測定 :不具合危険部位の取り漏らし

ARGUSを用いることでこれらの問題に対する一定の解決策がもたらされます。

    [ ARGUS ]
  • 軽微な測定工数 :(例) 30分/ドアインナー全周
  • 全周測定可能 :危険部位のモレ防止
  • ARGUS上で完結 :同一プラットフォーム上でデータ間比較可能・帳票出力可

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